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アーティストと鋳物産地をつないだ「ALLOY & PEACE (合金と平和)」 〜 高岡の鋳造会社 平和合金と現代美術作家 中村哲也さんの挑戦 〜

2021.01.07 UP

 

「高岡とつながる人々」のページにて、

事例紹介として高岡の鋳造会社 平和合金と現代美術作家 中村哲也さんの協働についての記事を公開しました。

大型の現代美術作品に高岡の鋳物を用いる先駆けとなり、ものづくり産地とアーティストとの理想的な関係を作り出したプロジェクトの経緯とその後について、キーマンとなるおふたりからお話を伺いました。

 

>>記事はこちらから。

平和合金 × 中村哲也さん

技と経験値と発想の出会い Creators Meet TAKAOKA プロトタイプ発表

2021.01.05 UP

 

高岡に雪が降った師走のある日、いよいよ各チームから今取組みにおけるプロトタイプが届けられた。10月のキックオフツアーからわずか2ヶ月にも関わらず、発想が着実に具現化されているサンプルや音源の数々は、いずれも出会いから始まったものづくりの歓びに満ちていて、率直に「欲しく」なるものばかり。さっそく、順番に紹介していこう。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが取り組んできたのは『燭台』。

「溶かして」つくる高岡銅器の鋳造工程が、視覚的に表現されたポップなデザインが特徴だ。溶けてみえる上部は鏡面加工、土台となる下部は鋳肌そのものと、真鍮の違う表情がひとつの製品に同居している。

蝋燭のロウが溶けて溜まっていく姿はどことなく野暮だが、この燭台なら溶けたロウと燭台が連続的につながって、美しく感じられそう。

「燭台は製品としてはあるんですが、うまく展開していくものはこれまでにはなくて。販路の広がりをつくれたら、すごく面白くなると思います(能作:磯岩さん)」

「能作さんといえば錫のイメージが強く真鍮製のものは少ないので、この燭台が真鍮の商品を代表するものになったら嬉しいなと(Hamanishi DESIGN:鎌田さん)」

 

デザインを主に担当したHAMANISHI Design代表の濱西さんは、プロダクト開発のスピード感に驚いたと言う。

「能作さんのデザインリテラシーが凄く高いんだと思うんです。ぼくらのディティール、マテリアルを大事にしたいという想いと、長い歴史を現代的な解釈で形にしたい、それらの意図を汲み取った製造をしてくださっている。理解がないと、鋳肌と鏡面加工の同居って面倒臭いはずですから。ここまでスムーズすぎて、怖いくらいです。笑 (HAMANISHI Design:濱西さん) 」

このチームでは和蝋燭も開発中で、燭台と蝋燭のセット販売を検討している。仏具としてではなく、文具やインテリアといった売り場で、「炎を眺める時間」をひとつのライフスタイルとして提案していきたいという。

 

 

漆と現代を結ぶまるい「縁・円」

漆器くにもと×三井化学MOLpからは3つのラインでの商品・企画案が提出された。

サンプル試作が進んでいるのは、経年変化を楽しむ漆のアクセサリー「縁EN・輪WA」。

三井化学が誇る技術力によって開発された、海のミネラルから生まれた樹脂「NAGORI™樹脂」 と、植物由来のウレタン樹脂「STABIO®」で成型したアクセサリーに漆を塗布。太陽光によって経年変化する漆の魅力を、身につけるものから伝えたいという。

 

NAGORI™樹脂は陶器のような温かみと重さ、STABIO®は柔らかさと透明性が特徴。それらと漆との組み合わせによって、木地を基本とするこれまでの漆製品にはない、重みや透け感といった新たな質感の創造が期待される。色は朱、黒、溜塗、白檀塗の4色で、小さな球状のものと、大きな輪っかのタイプの2種類で展開する。

NAGORI™樹脂による「縁EN」のサンプル。いわゆるプラスチックの安っぽさを感じさせない

「輪WA」の3Dスケッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この素材に漆を乗せて何の意味があるのか?という点でずっと悶々としてきました。プラスチックと一言で片付けられない、漆に対抗できる素材でなければいけない。今回ひとつ「重さ」を付与することで、どういった反応になるのか知りたい(MOLp:宮下さん)」

「漆器業界にはプラスチック=偽物のイメージがありますが、プラスチックと一言に言っても様々なものがある。生分解性や熱に強いなど様々な機能を付加できるので、そこに工芸の精神を加えて、今の生活に対応できるものを目指せたら面白いなと。漆器だからいいんじゃなくて、素晴らしいものだから欲しい、その第一歩として樹脂の良いものがつくれたら(漆器くにもと:國本さん)」

その他、和紙と三井化学のポリオフィレン合成パルプ「SWP®」と漆のコラボレーションアイテム企画、漆器くにもとの地場ネットワークをいかした金属製の防音ボードの台座製作も進行している。

アクセサリーはスケジュールが間に合えば、来年3月に青山で行われるMOLpの展示会でお披露目、先行予約を受け付ける予定だ。

 

 

マテリアルと表面処理の可能性

竹中銅器とTakashiTeshimaDesignから届いたのは、4つの方向性から表面加工の可能性を探る取り組みの数々。一旦すべてのアイディアを具現化し、そこから製品化に進めるものとそうでないものとを精査していくという。

 

Re Produce :「つくらないでつくる」「解体と再構築」といったテーマで、既存の香炉や花器などを切断し、いくつかの製品に再構築する。

 

TOYAMA : 黒部渓谷を表現したトレイと箸置きのセット。トレイの青は銅の緑青、箸置きの赤は漆。高岡の産地内でつくりだせる色や質感の幅広さが感じられる。

 

Still we live : 外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。ヒビの入った金属塊にはかなりの迫力がありそう。使いながら緑青の色を育てていく面白さも。

現在はブロック塊でサンプルを試作中

 

Gradation : 鏡面加工から緑青による着色の色だけでない質感のグラデーションをみせるもの。花器またはタンブラーを想定している。

 

「職人さんがムラだと感じる製品ごとの色の違い、グラデーションのばらつきが、かえって一点ものとしての魅力に感じます。とにかくおもしろくて膨らませすぎたところもあるんですが、素晴らしいスピード感で試作を進めていただいるので、まずはすべてのイメージを形にしたいです (TAKASHI TESHIMA DESIGN:手嶋さん)」


「慣例的にやろうとしないこと、思い込みでやならないことを手嶋さんからやってみようといわれて、試して気づかされることがすごくありました。今回色々とトライしてみて、全てが今後のノウハウになるととらえています。グラデーションなんて、ありそうでなかったことかもしれません。海外の展示会なども意識して、販路を考えていきたいと思います (竹中銅器:喜多さん)」

 

 

 

View Point (ビューポイント) 三次元の国旗

佐野政製作所とshy shadowのチームがつくるのは、三次元で表現した国旗のオブジェ「View Point」。

「イメージの枠外から来た、全く予想していなかったアイディアでした。絶対に世の中にない、凄く良い、ぜひやりたいと。独特なカーブや段状の形など、自由に形を作れる鋳造の良さも活きます。持った時の金属の重さも感じてもらえたら (佐野政製作所:佐野さん)」

写真は木型で、完成品は真鍮製を予定。着色はせずに、表面加工で色の違いを表現する。大きさは6cm×4.3cmほど。

NYで20年以上働き、今年1年は旅をしながら日本に滞在しているというshy shadowの芳村さん。現在は赤坂に居を構え、飛び込みでの販売交渉のための店舗リストを佐野さんと作成中だという。

「あちこち散歩しながらインテリアショップをまわってます。ファッションブランドもいいかもしれない。妻がアメリカ人なので、一緒に行くと格があがるんですよ。外国人が好む製品ですよって話もできる。笑。直接ドアを叩いていくのは抵抗ないので、行かない手はないかなと」

「こうしたものづくりの機会がずっと欲しかったんです。こうやって出会えて、光栄で感動しています。佐野さんも、木型の工房の方も、みんなそれぞれに専門分野を持つアーチストです。アーチスト同士が集まってつくるものって、自我にとらわれてない、きれいなものだなって思います」

「表情豊かなものなので、手に持って、あらゆる角度から彫刻的にみてほしい。ある物事を違う角度からみたらどうなるんだろうと、このオブジェが視野を広げるきっかけになれば (shy shadow:芳村さん)」

 

 

 

Vague (ヴァーグ) おりんの奏でる音楽

シマタニ昇龍工房×未音(ひつじおと)制作所から届いたのは、おりんを使った楽曲たち。

おりんを鳴らした音とおりん制作時の音(焼成音など)のみをプロセッシング(音の波形の一部分を切り取ったり、表情を変えたりすること)し、おりんをつくる過程をコンセプチュアルに表現した5曲の楽曲を制作する。

「おりんそのままの音と加工した音を組み合わせて、いろんな表情で表現しています。おりんの音は純粋音に近い、すごくきれいな波形を持ってるので、加工しても混ざり物のない、きれいな音になるんです」

楽曲は全方向から音がまわって聴こえるような、5.1chサラウンド立体音響再生可能環境を想定。勝興寺でのオンラインライブ(観客を入れるかどうかは検討中)およびインスタレーションの発表を目指す。動画・写真のアートワークも制作し、CDと合わせて商品として流通するものにしたいという。

また若狭さんは同時期に金沢、高野町、東京でも別ユニットでの作品発表を予定しており、それらとの連携、さらにはフランス/ドイツのエレクトロミュージック、アートコンペティションへの応募も計画している。

「ずっとおりんを仏具ではなく楽器として提案したいと思っていたので、こういう機会をいただいて本当に嬉しい。録音の際には一番小さいおりんもすごくよく響いて、お寺の音響の良さにも驚きました。おりんをつくっている自分自身もパワーをもらう、心が豊かになる経験でした (シマタニ昇龍工房:島谷さん)」


「お寺にあんなふうにおりんが並ぶのは、芸術作品としても感動的な空間でした。みんなで耳を澄ませて、普段は聞き逃してしまうような音を聞こうとした、それも美しいことだったと思います。おりんの音には、比喩じゃなくて、浄化されるものがある。インスタレーションとライブで構成される勝興寺でのイベントを、全国の様々なお寺でもやっていけたら (未音制作所:若狭さん)」

 

 

Sedge(セッジ)菅製のスピーカー

未音制作所と高岡民芸のチームから届けられたのは、菅製のスピーカー。

写真は骨組みの状態で、これからそこへ菅が編み込まれていく。プロダクトデザインは、Vagueでのアートワークも担う黒野真吾さんが担当した。

「実際に見るとかなりの物量と存在感、高級感があります。モダンさのなかに民藝的な、土地から立ち上るような空気感も感じられて、ほんとうに格好良いですよ (若狭さん)」

「つくっていると、発想が基本的に「笠」から離れないんですね。スピーカーなんて考えつかないんです。突拍子もない提案をもらえてすごく嬉しいし、つくっていてもワクワクして、楽しいです。今回の提案でイメージの枠を取りさってくださった気がします (高岡民芸:中山さん)」

大量生産ができないため、今のところは展示会等における大きな取引の商談は考えていない。まずはwebサイトの作成と、ホテル・旅館や店舗への直接交渉をイメージしている。

欲しいと思う人は1年や2年待っても欲しい、それくらいの力を放つと予感させるフォルム。ものとしての美しさはもちろん、ものに適した健やかな流通のあり方も切り拓く製品になることを期待したい。

 

どのチームからも聞かれたのは、工房のものづくりに対する真摯さ、製品化における諸問題に対応する経験値への信頼、クリエイターの新鮮な発想にはじまるものづくりの歓びといった声だった。

確かな技術・経験値と、知らないからこその発想が出会って、ひとつひとつの製品が高揚感のなかで生み出されている。そうした良い波長を持っている品は、求めている誰かにきっと届く。必要としている人に必要なだけ届き続ける、持続するサイクルがずっと紡がれていくことを静かに願った。

プロトタイプということで、価格設定や販路の詳細が決まっていくのはこの先。その後にも展示 会に出展したり、取り扱いの交渉があったりと、製品開発から私たちの手に届くにはまだまだ長 いプロセスを経る。

きっとどこかで目にするようになるだろう製品たち。もしも見かけたら、あのプロトタイプがこうなったのだと、高岡のこと、産地のこと、工房とデザイナーの皆さんの想いのことをぜひ思い出して、手にとってみてほしい。

 

未音制作所×シマタニ昇龍工房・高岡民芸 photo by Shingo Kurono

高岡のアーティスト、17組が制作した動画がオンラインで視聴できます!

2020.12.25 UP

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で発表の機会を喪失したアーティストの創作活動を支援する「高岡市芸術文化オンライン発信支援事業」の全作品を、高岡市のホームページ等で公開しています。

 

*関連記事

高岡を活動の拠点とするアーティストを応援!高岡市独自の補助事業の募集を開始しました。

ジャンルは、ロックバンド、箏、尺八、胡弓、三味線、フルート、合唱、独唱、日本舞踊、映像作品など、多種多様。

それぞれのパフォーマンスはもちろんのこと、高岡の美しい映像が盛り込まれていたり、撮影場所が工夫されていたり、高岡ならではの魅力が同時に発信されているところも見どころです。

 

どの映像も、今後の社会経済活動への希望や、社会全体の停滞感を払しょくするような元気・勇気を与える作品ばかりです。

 

落ち込み気味な社会のなか、自粛が続いた芸術活動ですが、こうして芸術文化に触れることで心が豊かになり、明日への活力が沸いてくることが動画を通して感じられることでしょう。

 

動画はスマートフォンやパソコンで気軽に視聴できます。これまで興味のあったジャンルも、そうでなかったものも、これを機会に鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

◆公開・配信サイト

(1)高岡市ホームページ

応援しよう!高岡のアーティスト/芸術文化オンライン発信支援事業

https://www.city.takaoka.toyama.jp/bunsou/bunsou/documents/youtubechannnel.html

 

(2)YouTube文化創造都市高岡【公式】チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCRyqlmNqPrUbnMdtGcTzbRg

外からの目で見出す「場の力」が創出した新たな音楽体験 〜 2つのフォーク・ロック・バンド Robin’s Egg BlueとROTH BART BARON の挑戦〜

2020.12.21 UP

 

「高岡とつながる人々」のページにて、

事例紹介として高岡市出身の石浦雅さん(Ishi-G 雑楽工房/Robin’s Egg Blue)と、東京を拠点に活動するフォーク・ロック・バンド ROTH BART BARONの協働についての記事を公開しました。

伏木・勝興寺での「ふるこはんフェス」における音楽体験や、過去2回開催している音楽イベント「雑Square」をはじめた経緯とその思いについて、2組のクリエイターからお話を伺いました。

 

>>記事はこちらから。

石浦雅さん × ROTH BART BARON

人がいて「もの」が生まれる、うねりと波長 Creators Meet TAKAOKA 2020 経過報告

2020.12.09 UP

キックオフツアーの開催から約1ヶ月。それぞれのチームで打ち合わせが重ねられ、製品化に向けてのサン プルや型づくりが順調に進んでいる。いずれもワクワクと完成が楽しみになるものばかりだ。

そんなある日、高岡・伏木にある古刹『勝興寺』にて、シマタニ昇龍工房×未(ひつじ)音制作所チームに よる「おりん」のレコーディングが行われた。

「おりん」の「レコーディング」とは?なんとも不思議な気持ちで現場に向かうと、本堂にはぐるりと置か れた大小様々な「おりん」たち。高い音から低い音まで、いくつもの音波がうねりになって、空間に響き渡っ ていく。この音から、何がつくられようとしているのだろう。 

 

体の芯に響く音

「細胞が活性化するみたい。お寺で聴くと、やっぱ、すごいですね」

未音制作所の若狭さんが興奮した面持ちで言う。「お寺で何かやるのは初めてなんですが、イベントとかラ イブじゃなくて、おりんで何かしたいとずっと思ってたんです。好きなんですよね、おりんの音」


手のひらサイズから数人がかりでないと運べない巨大なものまで、「とにかくありったけを持ってきた」と シマタニ昇龍工房の島谷さん。「おりん」たちが円形に並んでいる姿は、動物の群れにも似て、なんだか生 きているよう。

若狭さんはそのひとつひとつに内側と外側の二方向からマイクをあて、波長が消える最後の一瞬まで、音を 余さずに収めていく。マイクは円の中心にも全方向の音を拾うものが据えられ、個別に鳴らされた音と、全 ての「おりん」が鳴らされ響きあう音とが採集された。

時は夜。かすかな灯が燈されただけの敬虔な空間で鳴り響く「おりん」。体の芯に響く音は波のようで、次 から次へと寄せる波に飲み込まれて、別の場所に連れていかれる感覚になる。

「音は素材で、それをどう料理するかが音楽家の仕事です」と若狭さん。

現在予定されているのは、採集した音をもとに5曲程度のコンセプトワークのような楽曲をつくること。楽 曲はCDとしての販売や、暖かくなった春頃には勝興寺でのライブイベントも考えたいという。ぜひ高岡の この空間で、楽曲になった「おりん」を体感したい。

レコーディングの翌日には、菅笠の高岡民芸工房にて打ち合わせが行われた。進んでいるのは菅笠を利用し た「スピーカー」の制作。軽く質感の柔らかな、 インテリアに調和するものが目指されている。

こうした制作風景、音の採集風景は動画作品、またアートブックのようにCDと合わせて販売する案も計画 されている。音楽、写真、動画、ライブ…さまざまな方向から魅力を引き出される、おりんと菅笠。どんな 姿をみせてくれるのか、期待が高まる。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが製品化を進めているのは「真鍮の燭台」。昨年度のモデルツアーにも参加した デザイナーの鎌田さんからは、金属を「溶かして」つくる高岡銅器の製法と、ロウソクが「溶ける」現象を リンクさせさた、ロウソクの熱で燭台自体が溶けかかっているようなデザイン案が届けられた。

ゆらめく炎。静けさ。部屋を暗くしてロウソクの光で過ごす時間は、お寺の空間体験やおりんの音色にも通 じる、日々のせわしなさから離れた、ふっと息をつけるものになるはず。

燭台=必ずしも仏具ではないが、この製品を使う人が感じとるものは、仏具としての高岡銅器に連なる、精 神性を帯びたものかもしれない。

「まず何より、去年繋がった高岡とこうしてまたプロジェクトができることがとても嬉しいです。様々な縁 に感謝しつつ、種まきが実ったような喜びもあります。学生の頃からの憧れの企業である能作さんと一緒に ものづくりが出来ることにワクワクすると同時に、今クリエイターとして何をすべきかを考え、未来に向け た提案ができる様に、身を引き締めてプロジェクトに向き合おうと思います(鎌田さん)」

 

漆器にソザイを四則演算する

漆器くにもと×MOLpでは、大きく分けて3つのラインで取り組みが進んでいる。

1つは、漆に興味を持つきっかけとしての『アクセサリー』。「漆だから」ではなく、「欲しい」と手に取っ たものが実は漆だったという回路を開くことで、漆を知ってもらう。2つめは、もともと漆器くにもとさん へ依頼がきていた利賀村にあるオーベルジュへの提案食器。こちらは越中和紙も利用し、すべて富山の素材 を使った製品開発を進める。そして3つめが、食洗機と電子レンジに対応する漆器の開発だ。

「伝統的な漆器にソザイを四則演算することで、現代のライフスタイルに合わせた、漆器への関心を高める プロダクトを生みたい」というMOLpの皆さん。

四則演算するとはどういうことだろう?

「漆の性質はそのまま活かしながら、生地の木の部分を変えようと思っています。新素材を加え、掛け合わ せる、木を引く、木じゃなくてもいいと割り切る、、、食洗機と電子レンジに対応する漆器はすでにあるの で、他でやってないことを試みたい。詳しくはまだ言えませんが、楽しみにしていてください(MOLp宮下 さん)」

 

金属が経る時間の可視化

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGNが取り組むのは、4つのラインでの製品企画案。

1つは、竹中銅器に蓄積されてきた素地サンプルを分解して、別の商品に生まれ変わらせるというもの。例 えば香炉を輪切りにして小物入れに、花瓶を切断して二つのカップに。この製品は元は何だったのか?想像 を巡らせながら使うのも楽しそうだ。

2つめは、富山の代表的な観光スポット、黒部渓谷の色彩を再現する和食器と箸置きのセット。

3つめは、外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。水を注ぐことで 錆が進行し、質感が変化していくことを想定する。

そして4つめは、デザイナーの手嶋さんがキックオフツアーの際にも話されていた、金属のピカピカに磨か れた質感と、緑青がグラデーションで表現されたタンブラーなどの器。 磨きと、錆び=緑青といった金属の化学変化を利用した着色は、きらびやかさと侘び寂びの、ある意味で真 逆の価値観ともいえる。それが技術的にどう叶えられるのか、またそのものを見たときに私たちは何を感じ るのか、興味深い。

「高岡ツアーや工房見学から始まり、実際のデザインや試作まで、普段手掛けている量産プロダクトとは異 なった視点で取り組むことができ、非常に面白く興味深く取り組んでいます。部分的なサンプルが少しずつ 上がってくるなかで、当初の想像通りにはいかない点も出てきていますが、それらも含め、変化させながら ブラッシュアップしていければ(手嶋さん)」

 

国旗を三次元で解釈すると?

佐野政製作所×shy shadowのチームでは「三次元の国旗」のオブジェの木型サンプル製作が進行してる。

デザイナーの芳村さんは、当初は動物の形をした靴べらのイメージラフを起こしていたが、靴べらはよくあ る製品だということで仕切り直し。打ち合わせを重ねるうちに、芳村さんが以前から温めていた『国旗を3 Dにする』アイディアを提案、佐野政さんが強く気に入ったことで、方向性が一気に定まった。

「なんていうか、波長が合うんです。佐野さんと出会わせていただいたことを感謝してます。物事を常に違 う角度で観察する必要性を感じる最近、日本人、世界の人々があらゆる角度で自国、他国を見ることが出来 たら、新しく面白い発見があるのではと、オブジェを通じて問いかけられたら(芳村さん)」

素材は真鍮で、着色はせずに、サンドブラスト、ミラーフィニッシュなどの表現の磨き具合で国旗の色素を 表現する予定。「佐野政さんは表面加工のプロだと感じたので、その技が活きるものにしたい」と芳村さん。

国旗を三次元で解釈したらどうなるんだろう?ぜひつくってみよう!そうして意気投合して進んでいくもの づくり、なんだかとても楽しそうだ。

伝統の技術は技術としてあるものだけど、それを形にするのはそれぞれの人であり、その人らしさがその工 房らしさでもある。デザイナーや作家ももちろん、感性や発想を持った生身の人。

人がいて、ものがあるのであって、逆ではないこと。その先にはさらに、人がいること。Creators Meet TAKAOKAは、そんなことを改めて実感できる取組みかもしれない。

いよいよ次回は各チームの取組みがプロトタイプとして着地する。人と人の出会いがどんな結晶を生み出す のか、どうぞお楽しみに。

 

 

シマタニ昇龍工房×未音制作所 Photo by Shingo Kurono