ものづくりの現場
FACTORY
FACTORY
高岡のものづくりは、約400年前、前田利長公が開町の際に、7人の腕利きの鋳物師をはじめ、さまざまな職人たちを招いたのがはじまりです。最初は鉄鋳物の生活用品づくりからはじまり、江戸中期以降は銅器づくりが盛んに。高岡銅器は国の伝統工芸品として、全国のトップシェアを誇ります。
同じく、国の伝統工芸品の高岡漆器は家具製作からはじまり、勇助塗、彫刻塗、青貝塗(螺鈿)といった高岡独自の技法が発展。明治期には日本トップクラスの漆器産地でした。いまでも螺鈿を施した漆器づくりでは、国内の9割のシェアを占めています。
高岡では伝統の技を活かした最新のものづくりが盛んで、高い技術を持った職人による分業制が進んでいるのも特徴。各工場・工房では、見学・体験ツアーを行っているところもあります。ものづくりの現場を間近で見て、体験して、高岡のすごさを再発見してみませんか。
生まれたばかりの金属を、
色で自在に変化させる熟練の技。
IROMASA
色政は、金工の仕上げ工程の1つ、「着色」を何代にもわたって生業としてきた会社。 高岡銅器、真鍮、銅、鉄製品等への発色・着色やそのメンテナンスを行っている。
着色とは金属(主に銅、銅合金等)に自然素材や特殊な溶液(秘伝レシピ)を使って金属表面を化学変化させて色を付けていく技法で、高岡銅器の特徴的な技術の1つ。薬品での発色や漆焼き付け、金箔押しなど様々な技法で、それぞれの金属の特性を生かした着色を行う。
丁寧な手作業で、金属をより美しく。
ONO Polish Works.
鋳物づくりの仕上げ工程の1つ、研磨部分を担う。主に美術品、工芸品、アート作品等の金属製品を中心に、手作業によるバフ研磨を行っている。バフ研磨とは、表面処理加工の研磨技術の1つで、回転モーター機に取り付けた布製、ゴム製などのバフホイールを回転させ、研磨剤を付けながら対象となる製品を押し当てて研磨していくというもの。切削から鏡面研磨まで対応している。指先の感覚から微調整される職人技によって1つ1つ丁寧に作業した仕上がりの美しさが好評だ。
〒939-1118 富山県高岡市戸出栄町46-1-2
TEL 080-3047-1908
変わり種歓迎!
小ロットからオリジナル製品作りに対応。
Hokushin Industry Co.,Ltd
表札・銘板や記念碑、オリジナルの焼印等をはじめ、クライアントの要望に応じた鋳物づくりを行う鋳造メーカー。再生アルミニウムを活用したデザイン性の高い鋳物皿「FUKITO」が2016年にグッドデザイン賞をするなど、柔軟な姿勢で時代にあわせたものづくりを行っている。
「長年培った鋳造技術で地域を盛り上げたい」との思いから、約20年前に地元・高岡大仏の大判焼型を鋳造し、様々なイベントで社長自ら実演販売も行ってきた。これまで全国180箇所以上にオリジナルたい焼き・大判焼の焼き型を納めている。
伝統的な手仕事と最先端の技術で、どんなものでも立体に。
SHIMA-MODELING Co, Ltd.
鋳型を造るための「原型」を造り、鋳物製造における最初の工程を担う原型師。図面やイラストなどのイメージさえあれば、どんなものでも立体にする技術をもつ。
昔ながらの手わざに加え、3次元CAD・CAMや高性能3Dプリンターなどの最新技術も活用し、木型だけでなく樹脂、アクリルなど様々な素材で原型を作成する。近年は原型製作だけでなくモックアップ(工業製品の設計・デザイン段階で試作される、外見を実物そっくりに似せて作られた実物大の模型)や建築模型、異業種の陶器やガラスの型やオリジナルのインソールなども制作している。
金属のもつ音色の可能性を探り続ける、
伝統と革新の製作所。
Koizumi Seisakusho Co.,Ltd
明治22年の創業。銅合金鋳造及び加工を行う製作所。特に音響クラフト製品の開発を得意としており、金属の持つ魅力的な音色を最大限に引き出した「おりん」や卓上ベルがグッドデザイン賞を受賞している。そのほか「快音」にこだわったアイテムを取り揃えたオリジナルブランド「小泉屋-KOIZUMIYA」を展開。3Dプリンターやモデリングマシン、レーザーマーキングなどの最新技術も積極的に導入し、400年以上続く高岡銅器の伝統を基軸としながらも革新的な製品づくりに取り組んでいる。工場見学とともに錫の皿やおちょこづくりワークショップも体験できる。
新しい「問屋さん」のかたちを築く、高岡のものづくりの窓口
SHIKKI KUNIMOTO
4/20リニューアルオープン予定!
明治42年創業、高岡漆器を中心に全国の漆芸品を取り扱う専門店。小売販売に加え、オリジナル商品の企画・製造・卸販売も行う。伝統的な「彫刻塗」の技を生かしながら現代的なデザインを取り入れた「QUILT tray(キルトトレイ)」シリーズ、「螺鈿(らでん)」を施したアクセサリー「Jewel -3D RADEN COLLECTION」シリーズなど、 高岡の職人たちの技術を組み合わせながら「使える」ものづくりを行っている。江戸時代商業の中心地とした栄えた歴史ある山町筋の店舗では、伝統工芸から若手作家の作品までの厳選された品々に加え、螺鈿や金箔体験がたのしめる。
仏具も大型モニュメントも国宝修復も、熟練の技で。
KAJIHARA SEISAKUSHO Ltd,.
明治35年創業の鋳造所で、企画デザインから設計、制作(原型、鋳造、仕上加工、着色)、施工・設置に至るまで一貫制作を行う。伝統的な双型鋳造から、ガス型鋳造など様々な鋳造法を用い、大型の仏像・銅像・モニュメントや梵鐘から銘板、仏具など幅広いリクエストに対応可能で、国宝の再現・修復事業にも関わっている。熟練の職人たちが制作した製品は、浅草寺や高野山、昭和天皇多摩御陵ほか、国内外の至るところに設置されている。
伝統美と高岡の高い技術を生かしつつ、自由な表現を。
YOTSUKAWA SEISAKUSYO Ltd.
金屋町で3代続く鋳物メーカーで、日本の伝統美を高い髙岡銅器の技術で上質に表現する「喜泉堂」と、金属の良さを自由な発想で活かしたライフスタイルブランド「KISEN」の2大ブランドを展開。現在は、マーケティング、商品開発までを自社で行い、高い技術を持つ高岡の他の鋳物メーカーや職人に製造を委ねるファブレスメーカーとしてものづくりを行う。国内はもちろん、海外でも多数展示会・受賞実績あり。ショールームのほか石畳通りに面したギャラリー「たたら庵 喜泉」もある。
金属のプレス技術を武器に、新たな価値を作り続ける。
SEO Inc.
鋳造が主体の産地において、高岡銅器の中では珍しい2種のプレス加工技術、鍛造プレス・板金プレスを強みとする瀬尾製作所。現在は研磨や溶接などの仕上げや梱包まで一貫した生産を行うだけでなく、自社ブランドの商品企画や販売までを手掛ける。2つの自社ブランド『Sotto』(仏具)と『Rain Chain』(鎖樋)はいずれも現代の住宅建築に映える美しいデザインで、グッドデザイン賞などを受賞し各方面で注目されている。
金屋町に来たら訪ねたい、工房とショップ。
CASTING FACTORY RISABURO
明治初期から代々続く神初氏の工房。鋳造として最も古い技法である「双型鋳造法」をはじめ、新たな技法も取り入れながらものづくりを続ける。工房や地元で造られた高岡鋳物製品を販売するほか、好きな模様を彫って錫を砂型に流し込む鋳造体験も可能。店の奥には明治初期に建てられた作業場や土蔵が残り、昭和期の鋳物生産現場の雰囲気を伝えている。県内外の様々なジャンルの作家作品を展示・販売する「プチギャラリー・ゆづら」も併設。
伝統的な彫金技法で、金属に様々な模様を。
WADA CHOUKIN KOUBOU
金槌と、何種類もの鏨(たがね)とを駆使し、力強い深彫りや繊細な線などにより、花鳥風月や文字、紋など金属に多彩な模様を施す彫金の仕事。この工房では、仏具の装飾を中心に、依頼に応じて記念品製作や古物修理を行ったり、変わったものではアニメをモチーフにした五月人形に彫金を施したりと、対応範囲は多岐に渡る。彫金だけでなく、象嵌加工や筆メッキによる金・銀・銅の色つけ作業も行う。
自然が発する音のような、癒しの響き。
YAMAGUCHI KYUJO Co., Ltd.
明治40年創業。神仏具や美術銅器を中心に扱いながら、仏具のひとつである「おりん」を様々な生活のシーンに向けて提案する「久乗おりん」ブランドを展開する。久乗おりんの音には「f分の1のゆらぎ」があり、脳のα波を増加させ、人の心を穏やかにするという研究報告も(日本音響研究所)。十二支にあわせたおりんや手の平サイズのおりんなど、ショールームでは100種以上のおりんを鳴らしたり購入したりすることができる。
大型鋳物を中心に、仏像から現代アートまで。
HEIWA GOKIN
明治42年の創業時より、花器、茶道具、仏具等を製造していたが、戦後は美術鋳造の需要増加に伴い、銅像、仏像、モニュメント等大型作品を中心に手がける。時代の変遷によって蓄積された、多様な鋳造方法による対応が可能で、現代アート作家からの依頼も多い。最近では精密鋳造といわれる複雑形状の製品制作にも挑戦している。工場見学も受付可能。1300度にまで熱した金属を流し込む圧巻の「鋳込み」の様子は必見。
鋳造から仕上げまで、一貫した生産体制。
DOGU
明治32年創業の鋳造メーカー。一点ものから中量生産まで、そしてセミオーダーからデザイン提案まで、細かな対応で製品全体を総合的にサポートする。
生砂による生型(なまがた)鋳造と、接着剤(バインダー)を砂に混ぜて固める自硬性型(じこうせいがた)鋳造の両技法を使い分けるほか、道具独自の技法であるRIM樹脂の成形技術や、高度な技術と鋳造品のノウハウを蓄積した美術鋳物専門の仕上げ部門も有し、多種多様な品目を製作している。工場見学や鋳物体験も受け付けている。
漆技法の美を、現代に生きるテクスチャーに。
ALBEKY COMPANY
彫刻塗師屋(ぬしや)の三代目として習得した400年続く漆塗りの技法を応用し、葉脈や水の流れ、雲の流れなどの表現を切り取って「美しいと思っていただけるテクスチャー」を提案・発信する。彫刻塗のほか、和紙貼、布貼、金箔貼などを組み合わせ、ノミの使い分けや和紙の揉み方、布の編み方など多種多様な工夫により、幾通りものパターンを生み出す。従来のお椀やお盆、仏壇だけでなく、インテリア内装材やサインなど建築分野からの依頼も多い。工場見学希望の場合は、ご連絡を。
錫100%の曲がる器で、新しい世界をつくった。
NOUSAKU
株式会社能作は大正5(1916)年に高岡で創業した鋳物メーカー。仏具や茶道具製作からはじまり、最近では錫100%の特性を生かした「曲がる器」が大ヒット。日本橋三越や松屋銀座、阪急うめだなど、日本各地に直営店を持つ。そのほか医療器具、アーティストとの作品づくりなど、鋳物の技術を生かした新しい挑戦をつづける。産業観光の拠点を兼ねた新社屋・工場が2017年4月に完成し、カフェや錫鋳物づくりの体験スペースを併設するほか、職人が実際にものづくりに携わる姿を間近で見学することができる。
photo by 車田保
感性と色彩で、常識を塗り替えていく。
MOMENTUM FACTORY Orii
高岡銅器はその豊かな着色技術が特長の一つ。青銅色・煮色・朱銅色・焼青銅色・鉄漿色(オハグロ)など、技法・薬品の組み合わせで数十種類もの色のバリエーションをつくり出す。美術銅器の着色にとどまらず、食器、インテリア、エクステリア建材の分野でも、新しい色の世界を提案する商品を発表。また、ANREALAGE×momentumfactory Oriiのワークウェアが話題に。若い感性で、次のものづくりに挑む。
心に響くおりんの音色、カン、オツ、モン。
SHIMATANI SYOURYU KOUBOU
明治42年に創業し、日本各地のお寺で使われる鏧子(けいす・きんす)・おりん・大金(だいきん)の製造と調律を手がける。焼きなましをした金属を金槌で叩いて仕上げる鏧子職人は全国でも10人に満たず、そのうちの半数以上が高岡に。最終的に“鳴り”を出す際には、通称甲(カン)・乙(オツ)・聞(モン)と呼ばれる3つの音の音程・波長をすべて整える。鍛金の技を活かした「すずがみ」も人気商品。
伝統の技から、アルミの新ブランドへ。
TAKATA FACTORY
高田製作所は仏具製造で培った鋳造や研磨の高い技術をもとに、現代のものづくりを展開。インテリア小物のブランド「シロカネ」「タカタファクトリー」ではアクセサリースタンドや酒器などのギフト商品を。そして、日本初のアルミタイルのブランド「アルデコール」では、タイル、車止めなどのエクステリア製品を製造・販売する。原型から完成品まで社内でワンストップでの、ものづくりが可能。
華やかな螺鈿を、現代のプロダクトに。
MUSASHIGAWA KOUBOU
明治43年創業で、国指定の伝統工芸品、高岡漆器の青貝塗の技を四代にわたり受け継ぐ工房。青貝塗とは螺鈿のことで、アワビなどの貝を0.1ミリ程の薄さに削ったものをカットして漆を塗った面に貼り、模様を表現する。建築、家具、金属などへの青貝の加飾のほか、最近ではデザイナーとのコラボによる新商品や、ガラスの器、iPhoneカバーなどにも螺鈿を施し、現代の暮らしに合った青貝塗を目指している。