「工場見学ができるようなものづくりの産地は、他にも全国各地訪れていますが、やっぱり高岡が一番です。高岡は横のつながりが強いんだと思います。キーマンが多かったり、いろんな立場の方が積極的に関わってくれたりで、知り合いの数が桁違いに多くて。それが居心地のよさにつながっていますね。東京生まれの僕にはいわゆる“ふるさと”というものがないので、帰省するような感覚で高岡に来ています」
そう話すのは、都内に建築設計研究所を構える、建築家の松井大輔さん。東京生まれ東京育ちですが、年4回ほど高岡を訪れ、それだけでなく周りの人を巻き込むことで高岡ファンを増やし続けています。
きっかけは、友人が高岡の若い職人たちをモデルに描いたショートムービー『すず』〔※1〕(2013年)の主演女優を務めたことから。
「その友人(村上真希さん)がよく映画の撮影で高岡に行っていたことと、催事への出展などで毎週のように高岡の皆さんが誰かしら東京に来ていたことで高岡を知りました。真希さんは当時月2回ほど定期的に飲み会を開いていたんですが、そこで高岡の皆さんとご一緒して仲良くなって。それで『高岡に来なさい』と言われて、2014年の秋に高岡クラフト市場街〔※2〕に行ったのが、初の高岡でした」
そうして訪れた高岡の第一印象は「人があたたかい」ということ。参加した高岡伝統産業青年会〔※3〕のツアー(クラフツーリズモ)も濃い内容で楽しく、夜の交流も盛り上がり、一気に多くの高岡の人々と仲が深まった高岡滞在。それ以後松井さんは、どんどん高岡に通うようになりました。
最初は個人的に高岡とつながっていた松井さんですが、その後ご両親を連れていき、また別の機会には友人を誘って…と、気づけば、両親や友人たちも高岡のリピーターに。さらにその輪が新たなつながりを生み、今年(2019年)の高岡クラフト市場街でも、かなりの数の県外の知り合いが高岡に集結したのだそうです。
「色んな考えの方が高岡にもいると思いますが、高岡を多くの方に知ってもらいたいという思いがあります。最初から仕事のつながりを作るというよりも、高岡ファンが増えることで、じわりじわりと経済効果が生まれていけばいいと思っています」
自らが高岡に足繁く通うだけでなく、高岡ファンを積極的に増やし続ける松井さんに、最近では高岡伝統産業青年会からも、「伝達師」の肩書きと名刺が贈られたのだそうです。
今では、高岡を訪れれば駅などですぐ知り合いに出会ってしまうほど、松井さんには100人以上もの縁が高岡にできていました。イベントに合わせての来訪だけでなく、時には自身の建築の仕事で高岡の製品を使うことも。
「高岡の皆さんから、冗談のように『移住すれば』と言っていただいたりもして、そういうことも考えたりしますが、僕は東京で彼らが来た時の受け皿であることを自負しているんです。高岡がもっと元気になるために、東京にいながら高岡の宣伝をこれからもしていきたいし、僕みたいな人がもっと増えていけばいいなと思っています」
※1 ニッポン・ローカルショートムービー『すず』公式サイト http://suzu-takaoka.com/
※2 年に一度開かれる高岡の大きなクラフトイベント。
高岡クラフト市場街 公式サイト http://ichibamachi.jp/
※3 高岡の伝統産業を担う若手職人・問屋による青年団体。
・高岡伝統産業青年会公式サイト https://www.takaoka-densan.com/
・クラフツーリズモ https://craft-tourism.jp/