レポート

技と経験値と発想の出会い Creators Meet TAKAOKA プロトタイプ発表

2021.01.05 UP

 

高岡に雪が降った師走のある日、いよいよ各チームから今取組みにおけるプロトタイプが届けられた。10月のキックオフツアーからわずか2ヶ月にも関わらず、発想が着実に具現化されているサンプルや音源の数々は、いずれも出会いから始まったものづくりの歓びに満ちていて、率直に「欲しく」なるものばかり。さっそく、順番に紹介していこう。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが取り組んできたのは『燭台』。

「溶かして」つくる高岡銅器の鋳造工程が、視覚的に表現されたポップなデザインが特徴だ。溶けてみえる上部は鏡面加工、土台となる下部は鋳肌そのものと、真鍮の違う表情がひとつの製品に同居している。

蝋燭のロウが溶けて溜まっていく姿はどことなく野暮だが、この燭台なら溶けたロウと燭台が連続的につながって、美しく感じられそう。

「燭台は製品としてはあるんですが、うまく展開していくものはこれまでにはなくて。販路の広がりをつくれたら、すごく面白くなると思います(能作:磯岩さん)」

「能作さんといえば錫のイメージが強く真鍮製のものは少ないので、この燭台が真鍮の商品を代表するものになったら嬉しいなと(Hamanishi DESIGN:鎌田さん)」

 

デザインを主に担当したHAMANISHI Design代表の濱西さんは、プロダクト開発のスピード感に驚いたと言う。

「能作さんのデザインリテラシーが凄く高いんだと思うんです。ぼくらのディティール、マテリアルを大事にしたいという想いと、長い歴史を現代的な解釈で形にしたい、それらの意図を汲み取った製造をしてくださっている。理解がないと、鋳肌と鏡面加工の同居って面倒臭いはずですから。ここまでスムーズすぎて、怖いくらいです。笑 (HAMANISHI Design:濱西さん) 」

このチームでは和蝋燭も開発中で、燭台と蝋燭のセット販売を検討している。仏具としてではなく、文具やインテリアといった売り場で、「炎を眺める時間」をひとつのライフスタイルとして提案していきたいという。

 

 

漆と現代を結ぶまるい「縁・円」

漆器くにもと×三井化学MOLpからは3つのラインでの商品・企画案が提出された。

サンプル試作が進んでいるのは、経年変化を楽しむ漆のアクセサリー「縁EN・輪WA」。

三井化学が誇る技術力によって開発された、海のミネラルから生まれた樹脂「NAGORI™樹脂」 と、植物由来のウレタン樹脂「STABIO®」で成型したアクセサリーに漆を塗布。太陽光によって経年変化する漆の魅力を、身につけるものから伝えたいという。

 

NAGORI™樹脂は陶器のような温かみと重さ、STABIO®は柔らかさと透明性が特徴。それらと漆との組み合わせによって、木地を基本とするこれまでの漆製品にはない、重みや透け感といった新たな質感の創造が期待される。色は朱、黒、溜塗、白檀塗の4色で、小さな球状のものと、大きな輪っかのタイプの2種類で展開する。

NAGORI™樹脂による「縁EN」のサンプル。いわゆるプラスチックの安っぽさを感じさせない

「輪WA」の3Dスケッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この素材に漆を乗せて何の意味があるのか?という点でずっと悶々としてきました。プラスチックと一言で片付けられない、漆に対抗できる素材でなければいけない。今回ひとつ「重さ」を付与することで、どういった反応になるのか知りたい(MOLp:宮下さん)」

「漆器業界にはプラスチック=偽物のイメージがありますが、プラスチックと一言に言っても様々なものがある。生分解性や熱に強いなど様々な機能を付加できるので、そこに工芸の精神を加えて、今の生活に対応できるものを目指せたら面白いなと。漆器だからいいんじゃなくて、素晴らしいものだから欲しい、その第一歩として樹脂の良いものがつくれたら(漆器くにもと:國本さん)」

その他、和紙と三井化学のポリオフィレン合成パルプ「SWP®」と漆のコラボレーションアイテム企画、漆器くにもとの地場ネットワークをいかした金属製の防音ボードの台座製作も進行している。

アクセサリーはスケジュールが間に合えば、来年3月に青山で行われるMOLpの展示会でお披露目、先行予約を受け付ける予定だ。

 

 

マテリアルと表面処理の可能性

竹中銅器とTakashiTeshimaDesignから届いたのは、4つの方向性から表面加工の可能性を探る取り組みの数々。一旦すべてのアイディアを具現化し、そこから製品化に進めるものとそうでないものとを精査していくという。

 

Re Produce :「つくらないでつくる」「解体と再構築」といったテーマで、既存の香炉や花器などを切断し、いくつかの製品に再構築する。

 

TOYAMA : 黒部渓谷を表現したトレイと箸置きのセット。トレイの青は銅の緑青、箸置きの赤は漆。高岡の産地内でつくりだせる色や質感の幅広さが感じられる。

 

Still we live : 外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。ヒビの入った金属塊にはかなりの迫力がありそう。使いながら緑青の色を育てていく面白さも。

現在はブロック塊でサンプルを試作中

 

Gradation : 鏡面加工から緑青による着色の色だけでない質感のグラデーションをみせるもの。花器またはタンブラーを想定している。

 

「職人さんがムラだと感じる製品ごとの色の違い、グラデーションのばらつきが、かえって一点ものとしての魅力に感じます。とにかくおもしろくて膨らませすぎたところもあるんですが、素晴らしいスピード感で試作を進めていただいるので、まずはすべてのイメージを形にしたいです (TAKASHI TESHIMA DESIGN:手嶋さん)」


「慣例的にやろうとしないこと、思い込みでやならないことを手嶋さんからやってみようといわれて、試して気づかされることがすごくありました。今回色々とトライしてみて、全てが今後のノウハウになるととらえています。グラデーションなんて、ありそうでなかったことかもしれません。海外の展示会なども意識して、販路を考えていきたいと思います (竹中銅器:喜多さん)」

 

 

 

View Point (ビューポイント) 三次元の国旗

佐野政製作所とshy shadowのチームがつくるのは、三次元で表現した国旗のオブジェ「View Point」。

「イメージの枠外から来た、全く予想していなかったアイディアでした。絶対に世の中にない、凄く良い、ぜひやりたいと。独特なカーブや段状の形など、自由に形を作れる鋳造の良さも活きます。持った時の金属の重さも感じてもらえたら (佐野政製作所:佐野さん)」

写真は木型で、完成品は真鍮製を予定。着色はせずに、表面加工で色の違いを表現する。大きさは6cm×4.3cmほど。

NYで20年以上働き、今年1年は旅をしながら日本に滞在しているというshy shadowの芳村さん。現在は赤坂に居を構え、飛び込みでの販売交渉のための店舗リストを佐野さんと作成中だという。

「あちこち散歩しながらインテリアショップをまわってます。ファッションブランドもいいかもしれない。妻がアメリカ人なので、一緒に行くと格があがるんですよ。外国人が好む製品ですよって話もできる。笑。直接ドアを叩いていくのは抵抗ないので、行かない手はないかなと」

「こうしたものづくりの機会がずっと欲しかったんです。こうやって出会えて、光栄で感動しています。佐野さんも、木型の工房の方も、みんなそれぞれに専門分野を持つアーチストです。アーチスト同士が集まってつくるものって、自我にとらわれてない、きれいなものだなって思います」

「表情豊かなものなので、手に持って、あらゆる角度から彫刻的にみてほしい。ある物事を違う角度からみたらどうなるんだろうと、このオブジェが視野を広げるきっかけになれば (shy shadow:芳村さん)」

 

 

 

Vague (ヴァーグ) おりんの奏でる音楽

シマタニ昇龍工房×未音(ひつじおと)制作所から届いたのは、おりんを使った楽曲たち。

おりんを鳴らした音とおりん制作時の音(焼成音など)のみをプロセッシング(音の波形の一部分を切り取ったり、表情を変えたりすること)し、おりんをつくる過程をコンセプチュアルに表現した5曲の楽曲を制作する。

「おりんそのままの音と加工した音を組み合わせて、いろんな表情で表現しています。おりんの音は純粋音に近い、すごくきれいな波形を持ってるので、加工しても混ざり物のない、きれいな音になるんです」

楽曲は全方向から音がまわって聴こえるような、5.1chサラウンド立体音響再生可能環境を想定。勝興寺でのオンラインライブ(観客を入れるかどうかは検討中)およびインスタレーションの発表を目指す。動画・写真のアートワークも制作し、CDと合わせて商品として流通するものにしたいという。

また若狭さんは同時期に金沢、高野町、東京でも別ユニットでの作品発表を予定しており、それらとの連携、さらにはフランス/ドイツのエレクトロミュージック、アートコンペティションへの応募も計画している。

「ずっとおりんを仏具ではなく楽器として提案したいと思っていたので、こういう機会をいただいて本当に嬉しい。録音の際には一番小さいおりんもすごくよく響いて、お寺の音響の良さにも驚きました。おりんをつくっている自分自身もパワーをもらう、心が豊かになる経験でした (シマタニ昇龍工房:島谷さん)」


「お寺にあんなふうにおりんが並ぶのは、芸術作品としても感動的な空間でした。みんなで耳を澄ませて、普段は聞き逃してしまうような音を聞こうとした、それも美しいことだったと思います。おりんの音には、比喩じゃなくて、浄化されるものがある。インスタレーションとライブで構成される勝興寺でのイベントを、全国の様々なお寺でもやっていけたら (未音制作所:若狭さん)」

 

 

Sedge(セッジ)菅製のスピーカー

未音制作所と高岡民芸のチームから届けられたのは、菅製のスピーカー。

写真は骨組みの状態で、これからそこへ菅が編み込まれていく。プロダクトデザインは、Vagueでのアートワークも担う黒野真吾さんが担当した。

「実際に見るとかなりの物量と存在感、高級感があります。モダンさのなかに民藝的な、土地から立ち上るような空気感も感じられて、ほんとうに格好良いですよ (若狭さん)」

「つくっていると、発想が基本的に「笠」から離れないんですね。スピーカーなんて考えつかないんです。突拍子もない提案をもらえてすごく嬉しいし、つくっていてもワクワクして、楽しいです。今回の提案でイメージの枠を取りさってくださった気がします (高岡民芸:中山さん)」

大量生産ができないため、今のところは展示会等における大きな取引の商談は考えていない。まずはwebサイトの作成と、ホテル・旅館や店舗への直接交渉をイメージしている。

欲しいと思う人は1年や2年待っても欲しい、それくらいの力を放つと予感させるフォルム。ものとしての美しさはもちろん、ものに適した健やかな流通のあり方も切り拓く製品になることを期待したい。

 

どのチームからも聞かれたのは、工房のものづくりに対する真摯さ、製品化における諸問題に対応する経験値への信頼、クリエイターの新鮮な発想にはじまるものづくりの歓びといった声だった。

確かな技術・経験値と、知らないからこその発想が出会って、ひとつひとつの製品が高揚感のなかで生み出されている。そうした良い波長を持っている品は、求めている誰かにきっと届く。必要としている人に必要なだけ届き続ける、持続するサイクルがずっと紡がれていくことを静かに願った。

プロトタイプということで、価格設定や販路の詳細が決まっていくのはこの先。その後にも展示 会に出展したり、取り扱いの交渉があったりと、製品開発から私たちの手に届くにはまだまだ長 いプロセスを経る。

きっとどこかで目にするようになるだろう製品たち。もしも見かけたら、あのプロトタイプがこうなったのだと、高岡のこと、産地のこと、工房とデザイナーの皆さんの想いのことをぜひ思い出して、手にとってみてほしい。

 

未音制作所×シマタニ昇龍工房・高岡民芸 photo by Shingo Kurono

人がいて「もの」が生まれる、うねりと波長 Creators Meet TAKAOKA 2020 経過報告

2020.12.09 UP

キックオフツアーの開催から約1ヶ月。それぞれのチームで打ち合わせが重ねられ、製品化に向けてのサン プルや型づくりが順調に進んでいる。いずれもワクワクと完成が楽しみになるものばかりだ。

そんなある日、高岡・伏木にある古刹『勝興寺』にて、シマタニ昇龍工房×未(ひつじ)音制作所チームに よる「おりん」のレコーディングが行われた。

「おりん」の「レコーディング」とは?なんとも不思議な気持ちで現場に向かうと、本堂にはぐるりと置か れた大小様々な「おりん」たち。高い音から低い音まで、いくつもの音波がうねりになって、空間に響き渡っ ていく。この音から、何がつくられようとしているのだろう。 

 

体の芯に響く音

「細胞が活性化するみたい。お寺で聴くと、やっぱ、すごいですね」

未音制作所の若狭さんが興奮した面持ちで言う。「お寺で何かやるのは初めてなんですが、イベントとかラ イブじゃなくて、おりんで何かしたいとずっと思ってたんです。好きなんですよね、おりんの音」


手のひらサイズから数人がかりでないと運べない巨大なものまで、「とにかくありったけを持ってきた」と シマタニ昇龍工房の島谷さん。「おりん」たちが円形に並んでいる姿は、動物の群れにも似て、なんだか生 きているよう。

若狭さんはそのひとつひとつに内側と外側の二方向からマイクをあて、波長が消える最後の一瞬まで、音を 余さずに収めていく。マイクは円の中心にも全方向の音を拾うものが据えられ、個別に鳴らされた音と、全 ての「おりん」が鳴らされ響きあう音とが採集された。

時は夜。かすかな灯が燈されただけの敬虔な空間で鳴り響く「おりん」。体の芯に響く音は波のようで、次 から次へと寄せる波に飲み込まれて、別の場所に連れていかれる感覚になる。

「音は素材で、それをどう料理するかが音楽家の仕事です」と若狭さん。

現在予定されているのは、採集した音をもとに5曲程度のコンセプトワークのような楽曲をつくること。楽 曲はCDとしての販売や、暖かくなった春頃には勝興寺でのライブイベントも考えたいという。ぜひ高岡の この空間で、楽曲になった「おりん」を体感したい。

レコーディングの翌日には、菅笠の高岡民芸工房にて打ち合わせが行われた。進んでいるのは菅笠を利用し た「スピーカー」の制作。軽く質感の柔らかな、 インテリアに調和するものが目指されている。

こうした制作風景、音の採集風景は動画作品、またアートブックのようにCDと合わせて販売する案も計画 されている。音楽、写真、動画、ライブ…さまざまな方向から魅力を引き出される、おりんと菅笠。どんな 姿をみせてくれるのか、期待が高まる。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが製品化を進めているのは「真鍮の燭台」。昨年度のモデルツアーにも参加した デザイナーの鎌田さんからは、金属を「溶かして」つくる高岡銅器の製法と、ロウソクが「溶ける」現象を リンクさせさた、ロウソクの熱で燭台自体が溶けかかっているようなデザイン案が届けられた。

ゆらめく炎。静けさ。部屋を暗くしてロウソクの光で過ごす時間は、お寺の空間体験やおりんの音色にも通 じる、日々のせわしなさから離れた、ふっと息をつけるものになるはず。

燭台=必ずしも仏具ではないが、この製品を使う人が感じとるものは、仏具としての高岡銅器に連なる、精 神性を帯びたものかもしれない。

「まず何より、去年繋がった高岡とこうしてまたプロジェクトができることがとても嬉しいです。様々な縁 に感謝しつつ、種まきが実ったような喜びもあります。学生の頃からの憧れの企業である能作さんと一緒に ものづくりが出来ることにワクワクすると同時に、今クリエイターとして何をすべきかを考え、未来に向け た提案ができる様に、身を引き締めてプロジェクトに向き合おうと思います(鎌田さん)」

 

漆器にソザイを四則演算する

漆器くにもと×MOLpでは、大きく分けて3つのラインで取り組みが進んでいる。

1つは、漆に興味を持つきっかけとしての『アクセサリー』。「漆だから」ではなく、「欲しい」と手に取っ たものが実は漆だったという回路を開くことで、漆を知ってもらう。2つめは、もともと漆器くにもとさん へ依頼がきていた利賀村にあるオーベルジュへの提案食器。こちらは越中和紙も利用し、すべて富山の素材 を使った製品開発を進める。そして3つめが、食洗機と電子レンジに対応する漆器の開発だ。

「伝統的な漆器にソザイを四則演算することで、現代のライフスタイルに合わせた、漆器への関心を高める プロダクトを生みたい」というMOLpの皆さん。

四則演算するとはどういうことだろう?

「漆の性質はそのまま活かしながら、生地の木の部分を変えようと思っています。新素材を加え、掛け合わ せる、木を引く、木じゃなくてもいいと割り切る、、、食洗機と電子レンジに対応する漆器はすでにあるの で、他でやってないことを試みたい。詳しくはまだ言えませんが、楽しみにしていてください(MOLp宮下 さん)」

 

金属が経る時間の可視化

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGNが取り組むのは、4つのラインでの製品企画案。

1つは、竹中銅器に蓄積されてきた素地サンプルを分解して、別の商品に生まれ変わらせるというもの。例 えば香炉を輪切りにして小物入れに、花瓶を切断して二つのカップに。この製品は元は何だったのか?想像 を巡らせながら使うのも楽しそうだ。

2つめは、富山の代表的な観光スポット、黒部渓谷の色彩を再現する和食器と箸置きのセット。

3つめは、外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。水を注ぐことで 錆が進行し、質感が変化していくことを想定する。

そして4つめは、デザイナーの手嶋さんがキックオフツアーの際にも話されていた、金属のピカピカに磨か れた質感と、緑青がグラデーションで表現されたタンブラーなどの器。 磨きと、錆び=緑青といった金属の化学変化を利用した着色は、きらびやかさと侘び寂びの、ある意味で真 逆の価値観ともいえる。それが技術的にどう叶えられるのか、またそのものを見たときに私たちは何を感じ るのか、興味深い。

「高岡ツアーや工房見学から始まり、実際のデザインや試作まで、普段手掛けている量産プロダクトとは異 なった視点で取り組むことができ、非常に面白く興味深く取り組んでいます。部分的なサンプルが少しずつ 上がってくるなかで、当初の想像通りにはいかない点も出てきていますが、それらも含め、変化させながら ブラッシュアップしていければ(手嶋さん)」

 

国旗を三次元で解釈すると?

佐野政製作所×shy shadowのチームでは「三次元の国旗」のオブジェの木型サンプル製作が進行してる。

デザイナーの芳村さんは、当初は動物の形をした靴べらのイメージラフを起こしていたが、靴べらはよくあ る製品だということで仕切り直し。打ち合わせを重ねるうちに、芳村さんが以前から温めていた『国旗を3 Dにする』アイディアを提案、佐野政さんが強く気に入ったことで、方向性が一気に定まった。

「なんていうか、波長が合うんです。佐野さんと出会わせていただいたことを感謝してます。物事を常に違 う角度で観察する必要性を感じる最近、日本人、世界の人々があらゆる角度で自国、他国を見ることが出来 たら、新しく面白い発見があるのではと、オブジェを通じて問いかけられたら(芳村さん)」

素材は真鍮で、着色はせずに、サンドブラスト、ミラーフィニッシュなどの表現の磨き具合で国旗の色素を 表現する予定。「佐野政さんは表面加工のプロだと感じたので、その技が活きるものにしたい」と芳村さん。

国旗を三次元で解釈したらどうなるんだろう?ぜひつくってみよう!そうして意気投合して進んでいくもの づくり、なんだかとても楽しそうだ。

伝統の技術は技術としてあるものだけど、それを形にするのはそれぞれの人であり、その人らしさがその工 房らしさでもある。デザイナーや作家ももちろん、感性や発想を持った生身の人。

人がいて、ものがあるのであって、逆ではないこと。その先にはさらに、人がいること。Creators Meet TAKAOKAは、そんなことを改めて実感できる取組みかもしれない。

いよいよ次回は各チームの取組みがプロトタイプとして着地する。人と人の出会いがどんな結晶を生み出す のか、どうぞお楽しみに。

 

 

シマタニ昇龍工房×未音制作所 Photo by Shingo Kurono

産地の技の集積を知る Creators Meet TAKAOKA 2020 キックオフツアーレポート

2020.11.12 UP

立山連峰がくっきり望める秋晴れの気持ち良い一日。Creators Meet TAKAOKA2020のキックオフとなる高岡ツアーが開催された。

東京でのPRイベントとクリエイターを招いてのモデルツアーを実施した昨年。今年はもう一歩踏み込んで、実際にクリエイターと高岡の工房が協同し、作品や商品、素材をつくりだす、新たな展開をはかっていく。

今回の参加者は5組。うち2組が昨年度にひきつづいての参加、3組が新しい参加者だ。はじめに産地の全体像や風土を体感してもらおうということで、ツアーでは参加者全員で全ての協働先工房を巡った。

 

能作 × Hamanishi DESIGN

まず一行が向かったのは、高岡銅器を代表する鋳物メーカー「能作」の工場。鋳物場での鋳物砂を使っての鋳造工程に、研磨場での加工作業を見学させてもらう。なぜその作業をするのか、道具の配置や書いてある言葉の意味は…各々から発せられるクリエイターならではの質問に、お互いに刺激しあう場の空気が早々に醸成されていく。

案内してくれた磯岩篤さんは、商品企画を主に担当。昨年までは能作の東京事務所で働いていたが、高岡の人の魅力が忘れられず、今年から高岡に戻ってきたという。

一方の「Hamanishi DESIGN」のプロダクトデザイナー鎌田修さんは、昨年につづいての参加者。ちょうど社内で燭台をつくろうという企画がもちあがったときに、今企画を知った。

「昨年のツアーが強く印象に残っていて、燭台なら能作さんとやりたいと思っていたところだったんです。イメージもかなり明確に描けていて。室内で過ごす時間の質にこだわる人が増えた、今の感覚にフィットしたものができる気がしています」

すでに商品化への道筋もみえているようで、昨年度の種まきが見事に結実していくような嬉しさを感じる。出会いから生まれる、化学反応のようなプロダクト。おそらく私たちも手に取れるだろう製品を楽しみに待ちたい。

 

漆器くにもと × MOLp

つづいては漆器の企画問屋である、「漆器くにもと」へ。山町筋の土蔵を改装した店舗内には、高岡でつくれる様々な技法の漆器製品が並ぶ。いわゆる螺鈿細工である青貝塗りと彫刻塗りなど、代表の國本耕太郎さんが高岡の漆の技法について教えてくれた。

協働先となる「MOLp(Mitsui Cemicals Oriented Laboratory)」とは、三井化学社内のメンバーによって立ち上げられた有志グループ。主力製品であるプラスチックへの課題意識を背景に、素材が持つ感性的価値に着目し、社会に表現していく活動を行なっている。

3年前には表参道で展示会を実施し、太陽の光を受けると色が変わる糸を発表。展示会には様々なクリエイターが訪れ、アンリレイジ、ルイヴィトン、フェンディといった大手メゾンがMOLp発の素材をつかった製品を世に送り出した。

今回はMOLpから4人のメンバーがツアーに参加。そのうちの1人、宮下友孝さんは去年からの参加者だ。

「そのものをつくることで、職人さんの利が大きくなるような、強く動機付けできるものを考えたい。あとは、万年筆のような、樹脂製だけれど消耗品ではない、長く愛されるものをつくりたい気持ちもあって。形はまだ見えていないけど、想いは色々あります」

すでに来年3月にはMOLpの展示会が表参道で予定されている。今回の協働の成果も、そこで発表されるとのこと。思わずまだ見ぬ漆にまつわる新素材が、世界に羽ばたく未来を想像してしまった。

高岡漆器の勇助塗り、井波彫刻の欄間など、随所に名匠の技がうかがえる「土蔵造りのまち資料館」を見学した後は、山町ヴァレーにて昼食。「かねまつ食堂」さんの今ツアーのための特別魚づくしランチをいただいて、実は海も近い、高岡の風土を感じる時間になった。

 

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGN

「竹中銅器」は、高岡銅器産地で一番の規模を誇る企画問屋。90年代から建築家やデザイナーとのコラボ製作をはじめた、産地のさきがけ的存在でもある。店内は様々な製法の銅器製品が揃う、さながら見本市のような空間。

「新しい角度からの商品開発がしたい」とデザイン部長の喜多(きた)登さん。

「うちはいわゆるファブレスのメーカーです。自社工房を持たないかわりに、様々な技術を持つ工房とのマッチングが幅広くできる。今も産地内で50社以上とのものづくりが動いています」

対するお相手はプロダクトデザインに加えてファッションアイテムの製作販売もおこなう、手嶋隆史さん。

プロダクトデザインは理詰めで合理的に構築していく仕事だが、手触りの残る製品づくりにも惹かれ、ファッションアイテムをつくるようになった。そこから、伝統工芸にも興味を持ったのだという。

「竹中さんの社屋内にあるあらゆる銅器をみて、磨きによって現れる鏡面的なツヤと、素材の化学変化による着色、それぞれの全く違うテクスチャーに強く興味を持ちました。それらを同居させるのもおもしろそうだなと」

手嶋さんの言葉に、磨きと着色を全くの別ジャンルとして見ていたことに気づいた。ふとした発想に、外からの視点ならではの新鮮さを感じる。

この日のアイディアはあくまでも初見のイメージによるもの。この先どういった経過をたどって新製品が生まれるのか、発想の変遷も興味深い。

 

佐野政製作所×Shy Shadow

デザイナーの芳村明さんはアメリカの美大を卒業後、20年間アメリカのプロダクト業界の一線で働いてきた。今年は「もっと日本を知りたい」と、各地での出会いを仕事に繋げながら、日本中をまわる1年なのだそう。

「アメリカでは体験できない、とても貴重な機会だと感じています。ものづくりを具現化してくれる工房がなくなってしまうと、デザインの仕事も成り立ちません。全力で取り組むので、僕のことをどんどん使ってもらえたら」

一方の佐野政製作所はオーダーメイド品の受注製作やオリジナルの数珠かけを製作するメーカー。ゲーム会社が製作するキャラクターを象ったトロフィーなど、「他で断られた」難しい案件が舞い込んでくることも多い。

工房に到着してすぐ目にしたのは、螺鈿、彫金、着色と、様々な加工が施された金属のマグネット。銅器産地内の様々な加工技術の見本として、各工房に依頼して作られたものだという。

「分業というのが僕はとても良いと思っていて。依頼に対して、期待値を超える仕事をしてもらえることが多い。ひとつの会社で全部できると、そうはならないんじゃないかな」と代表の佐野秀充さん。

マグネットをみて、数枚のスケッチを起こして持参してきた芳村さんも、つくりたいもののイメージが変わったという。

「スペシャリストの匠が集まっている、産地の力を感じました。表面の仕上げの種類など、もっと詳しくうかがっていきたいと思います」

 

高岡民芸、シマタニ昇龍工房 × 未音(ひつじおと)制作所

音楽家である若狭真司さんは、今回二つの工房との協働を行う。それぞれの工房に対してすでに豊かなイメージが描かれており、どちらの可能性も捨てがたいということで、イレギュラーながら二社との協働が行われることになった。(今回は残念ながら日程が合わず、ツアーには不参加。)

ツアーも佳境に入る中で一行が向かったのは、菅の田んぼ。高岡民芸を営む中山夫妻は、菅を栽培するところから加工までを一貫して行っている。

福岡(高岡市・旧福岡町)の菅笠は時代劇や全国の祭などの需要に対してシェア9割を誇るが、元が農閑期の内職だったことから工賃が安く、高齢化と後継者不足が深刻化。そんななかで、中山煌雲さんは産地唯一の若手として、アートピースとして飾りたくなる菅笠づくりに邁進している。

「やったらやっただけ報われる、すごく可能性のある分野だと思ってます。新しいことも自由にできるから、どんどんやっていきたくて」と中山さん。

もうひとつの協働先は、「シマタニ昇龍工房」。職人の数が全国でも10人に満たない「おりん」をつくる鍛金の工房で、今年は曹洞宗大本山・永平寺のおりんの修理も行なった。

おりんづくりにおいて何よりも重要なのが、「調音」という音の調整作業。音色に耳を傾けながら、金属を叩くことによって、心地良い響きを生み出していく。感覚で身につけるしかない、一子相伝で伝わる調音作業は、代表の島谷好徳さんでも身につけるのに12年ほどかかったという。

「絶対音感があるかと聞かれたりもしますが、ないです。聞き分けられるのは「おりんの音」だけ。音楽的な才能があるわけではないんです」と島谷さんは笑うが、おりんに楽器的な要素があることは間違いない。

そして、協働する若狭さんは音楽家である。おりんを楽器としてとらえた時に何が起きるのか、期待せずにはいられない。

丸一日かけて、全6軒の工房を巡ったCreators Meet TAKAOKA2020キックオフツアー。メーカー、企画問屋、素材の栽培から製品化までを一貫して行う工房など、さまざまな現場を訪ねることで、高岡のものづくりの層の厚みを実感する1日になった。

それぞれの工房の背景には、長い伝統を持つ産地全体の技術の集積がある。その経験値と、クリエイターの発想が出会った時、どんな化学反応が起きるのか。今後の展開に注目したい。

 

 

市内外の老若男女を巻き込み発展中!とある鋳物工房が始めた「世界一のたい焼きプロジェクト」潜入レポート

2020.03.31 UP

400年以上の歴史を誇る高岡銅器。分業制のため、市内には多種多様な技術をもつ職人さんがいらっしゃいますが、企業・工房どうしで連携した新しい取組み、ユニークな取組みが盛んなことも高岡の自慢の1つといえるかもしれません。

今回ご紹介するのは、そんなユニークな工房のひとつ、北辰工業所( http://www.meivan.com/ )から広がっている、楽しくて美味しい取組みです。

 

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表札・銘板や記念碑、オリジナルの焼印等をはじめ、クライアントの要望に応じた鋳物づくりを行ってきた北辰工業所。再生アルミニウムを活用したデザイン性の高い鋳物皿「FUKITO」が2016年にグッドデザイン賞を受賞するなど、柔軟な姿勢で時代にあわせたものづくりを行っている工房です。

その代表である鋳造技能士、定塚康宏さんには、もう1つの顔があります。それが「たい焼き職人」。20数年前、「長年培った鋳造技術で地域を盛り上げたい」との思いから、地元・高岡大仏の大判焼型を鋳造し、様々なイベントで自ら実演販売を行ってきました。それだけでなく、誰でも実演販売ができるようなレシピや練習用材料の提供・仕入先紹介なども行うなどのサービスも奏功し、これまで実に全国180箇所以上にオリジナルたい焼き・大判焼の焼き型を納めてきました。

現在のプロジェクトの契機となったのは、あるときテレビ局から持ち込まれた「2メートルのたい焼きを作りたい」という企画でした。そうはいっても2メートルは難しいだろうと、企画は実現しなかったのですが、検討を経て2015年には1m級の焼き型を制作。2016年には専用の焼き台も完成し、関心のある市民のみなさんの前で発表したり、ビジネスフェアに出展したりしながら、何度か試作を重ねていたのでした。

ちなみに焼き台は大阪の会社に発注したのですが、大阪の職人さんも面白がりながら作ってくれたのだそうです。

 

2年のブランクを経て、2018年末に再始動

2016年の段階では、1mたい焼きの薄皮の中に通常サイズのたい焼きを250〜300個入れるという方法で行っていた試作。ところが、1mサイズの焼き型にそのまま小麦粉と餡を入れた本来のたい焼きの形ではなかなか火が通らず苦戦し、プロジェクトは一時中断していました。

2年のブランクを経た2018年末、プロジェクトの存在を知る仲間からの声もあり、定塚社長は再始動を決断。年明け2019年1月には、第1弾イベントを開催しました。

この日は興味のある方々の顔合わせということで、久々に焼き型に火入れをし、集まった人々で交流を図りながらいろんなアイデアを出し合っていました。

写真は、取材に伺ったときの様子です。

久々の火入れ

 

一回り小さい70cmの型で生地を試し焼き

 

集まった人々の交流を兼ねるため、焼き型で焼きそばも!

 

焼きそばや試し焼きの生地をいただきながら、アイデア出し

 

工房に置かれていた焼き型の原型

 

ちょうどその日、テレビでもたい焼き特集をやっていたらしく、その時点でのたい焼き日本一は60cm。この70cmの型や1mの型で、ちゃんと厚みのあるたい焼きが完成すれば、日本一、あるいはギネスも夢じゃない!?

 

大学生・高校生も研究に加わり完成へ

以後、プロジェクトは毎月の試作を続けてきました。失敗も成功の糧にしながら、そのたびに入れ替わり立ち替り、市内外からいろんな人が応援に駆けつけたり、知恵を出し合ったり。

2019年春からは、富山県立大学で工学を専門とする岩井学先生、高岡向陵高校で物理を専門とする藤川武命先生にも声をかけ、学生・生徒の皆さんの研究材料としても試作がスタートしました。

 

4月は大学の先生&学生さんほか、関係者のみでの試作。赤外線サーモグラフィで温度管理をしながらの大研究。<公式Facebookページより>

 

5月。炭酸水やアルミホイルなどを駆使し、粉の配合にも工夫して、ようやく全体がまんべんなく焼けた1mのたい焼きが完成!<公式Facebookページより>

 

5月にようやく一つの完成を見たあともさらに研究を重ね、10月には富山県立大学・高岡向陵高校、それぞれの学園祭でもお披露目。

 

高岡向陵高校の学園祭にて。研究内容のパネル展示とともに、巨大たい焼きの大盤振る舞い。<公式Facebookページより>

 

富山県立大学の学園祭でのパネル展示。巨大たい焼きもきれいに焼け、長蛇の列が!<公式Facebookページより>

 

 

ミルフィーユ型たい焼きの作り方に密着

こうして1年を経て、大進化を遂げた「世界一のたい焼きプロジェクト」。久々に現場の声を聞いてみたいと、約1年強ぶり(2020年3月)に試作の場にお邪魔してみました。

この日は、今後この巨大たい焼きを様々なイベントなどで活用してもらうことを目指したHow to映像の撮影のため、定塚社長、富山県立大学の岩井先生、高岡向陵高校の藤川先生の3名で試し焼きを実施。

 

着火後の適温を見極めるため、鉄板の温度を測っています。

 

この日に作られたのは、学生のみなさんが考案したミルフィーユ型のレシピ。皮と餡・さつまいもを交互に重ね、学園祭でも大好評だったレシピです。

 

生地を投入。まんべんなく伸ばしていきます。

 

両側の型に薄く生地を伸ばしたら、餡を伸ばし、さらに予めふかしておいたさつまいもを投入します。

 

片側の生地をかぶせたら、さらに餡とさつまいもを。
これを繰り返して3層のミルフィーユを作成しました。研究では6〜7層まで実績もあるそうです。

 

みんなで力を合わせて型を合体させる瞬間は、一番の見せ所。

 

見事に完成!

 

切り分けたたい焼きはこんな風に層になっています。大きめに切り分けると20〜30人前、小さめに切り分ければ40〜50人前にまでなるそうです。

 

「高岡をたい焼きのまちにしたい」

「プロジェクトを通じて、たい焼きを楽しむだけでなく、集まった人々に自分の特技や好きなことを生かしてほしいんです」。定塚社長はプロジェクトに込める思いをこう話します。

「人それぞれの関わり方があると思いますし、たとえば自分が思う『たい焼き』を思い描いてもらって、それを型にして焼いて食べたり、人にあげたりということが広がっていくのも面白いと思っています。『高岡に行ったらどこの家でもたい焼きが出てくる』って言われたりしてね(笑)」。

たとえば最近では、井波彫刻の職人さんが獅子舞の獅子をかたどった原型を製作し、獅子舞型の焼き型ができつつあります。

 

獅子舞好きの富山県民に人気が出そうな、獅子の焼き型。上が原型。

 

「1m級のたい焼きを焼く」ということも、まだまだ発展途上なのだそう。

「3年計画で考えています。これからもいろんな違う業種の方とお会いして、知恵をお借りし、あと2年のなかで、どうやって広めていけるか。試作も、焼く人の度量で全然違うものが出てくるので、まだまだ終わらないですよ」。

1mのたい焼きにしろ、通常サイズのたい焼きにしろ、たい焼きが焼ける人を増やして「たい焼きのまち高岡」を作りたい——1mたい焼きの先には、そんな野望が定塚社長にはあるようです。

これからも富山県立大学・高岡向陵高校とも引き続き連携しながら、定期的に場が設けられる予定となっています。今後2年の間に、思わぬつながりから広がる、新たな展開もあるかもしれないですね。

 

ご興味ある方は、ぜひYouTubeやFacebookページをチェックしてみてください!

 

 

◎Facebookページ「たいやき世界一に挑戦!」   https://bit.ly/2URDSdL

◎世界一たい焼きの作り方(3月の取材時に撮影されていたもの) https://www.youtube.com/watch?v=08hn5UjK-Xo

国宝・瑞龍寺で、新たな刺激と繋がりをもらう。「高岡熱中寺子屋」講義レポート(春からの“寺子”も絶賛募集中!)

2020.03.31 UP

高岡市内の国宝・瑞龍寺を拠点とし、世代を超えてつながる学びの場があります。

その名は「熱中寺子屋」。

もともと2015年10月に山形県高畠町で、廃校を利用して始まった「熱中小学校」をモデルに、全国3番目の「熱中小学校」として2016年に始まった取り組みです。

約半年間、月1回集まって、地元や全国で活躍されている方を講師としてお話を伺ったり、実習などを行ったりするほか、「課外授業」として県内各地のお祭りをみんなで見に行ったり、「部活動」を行ったりと、様々な展開が広がっています。講師もIT企業などの社長、大学教授、デザイナー、技術者、職人など幅広く、ここでしか聞けないような話が盛りだくさん。現在は4月18日(土)から始まる第8期を募集しています。

 

荘厳な雰囲気の瑞龍寺のなかで、一体どんなお話が聴けるのか?

第7期の、ある日の講義の様子をご紹介しましょう。

 

瑞龍寺の廊下を歩き、会場の「大庫裏」へ。

 

「大庫裏」は寺の台所。大きなかまどのある土間の、隣の和室が教室になっています。

 

この日は「情報」の授業として、「世界最高齢アプリプログラマー」として知られるITエヴァンジェリストの若宮正子さん、そして「家庭科」の授業として、北陸唯一の種麹店である石黒種麹店の石黒八郎さんが先生として来校。

 

1限目、若宮正子さんの授業の様子。

 

「私は創造的でありたい」と題された若宮先生の授業では、エストニアの電子政府のお話を中心に、様々な事例を紹介していただきました。

いろんな国に占領された歴史をもつエストニアは、「情報は国家なり」という理念を持ち、外国人でも仮想国民になれる”e-residency“という制度を持っています。「国民のデータがあればどこにでも国が作れる」「世界中に仮想国民がいれば、何かあっても世界中から声を上げてくれる」という考え方で、国の防衛をソフトパワーから行おうという画期的な制度です。若宮先生もエストニアの仮想国民になっていて、日本にいながらエストニアに会社を作ることだってできるのだそうです。

 

そのほか、スウェーデンの男女共同参画社会づくりのお話や、イスラエル製の視覚障害者のためのウエアラブル端末を体験したお話、たった10歳で起業家になる!と宣言しクラウドファンディングで資金を集めてエストニアに行った日本人の女の子のお話など、普段見ている世界を超えさせてくれるような、新たな視点をたくさんいただくことができました。

 

「年齢は単なる数字にすぎない」「人間70、80は伸び盛り!」と断言する姿が、とても格好良く、みなさん熱心にお話に耳を傾けていました。

 

休憩を挟んで2限目へ。

 

2限目は、全国に10軒ほどしかない種麹店の1つ、石黒種麹店の当主・石黒八郎先生による「腸内環境にやさしい発酵食品」。

南砺市(福光)で江戸時代から麹を作っていましたが、種麹店として明治28年に創業。一子相伝という希少な技術で受け継がれてきた独自の種麹を用いて、麹を昔ながらの麹蓋製法で1枚1枚手作りしています。種麹は、現在では6種培養しているとのこと。上の写真で手に持っているのが麹蓋ですが、驚きなのは、これを逆さにしても落ちないということ。たくさん菌糸がついているのは、いい麹である証拠だそうです。

 

授業終了後に間近で見せていただいた麹蓋の麹。フワフワぎっしりとした力強い麹です。

 

米が麹になることでの大きな変化は、米になかった酵素が100種類、成分が400種類生まれることだそうです。麹や発酵食品は近年大変注目を浴びていますが、なかでも日常に取り入れやすい食品の1つとして「甘酒」をご紹介いただきました。

 

1人1人に甘酒の試飲が配られました。

 

甘酒が「飲む点滴」と呼ばれているのは、聞いたことがある方も多いでしょう。実際、甘酒には、ブドウ糖、必須アミノ酸9種類、ビタミンB群が豊富に含まれ、これが点滴の成分とほぼ同じなのだそうです。また、オリゴ糖や食物繊維が豊富に含まれており、これらが「第2の脳」と呼ばれる腸内環境を整え、体の免疫力や肌の保湿力を高めてくれるといわれています。最近の研究では、「エルゴチオネイン」という、抗酸化力が非常に高い成分が含まれていることもわかっています。そのパワーたるやビタミンEの7000倍ともいわれ、石黒先生いわく、「1g20万円もする美容成分」なのだとか(!)。

 

笑いを交えながらのお話で、会場は終始楽しげな雰囲気に包まれていました。

 

ちなみにこの熱中寺子屋、毎回違う先生が違うテーマでお話をしてくれたり、生徒(寺子)どうしの活動や交流も盛んに行われたりしているので、期をまたいでリピート受講している方もたくさんいます。

1期からずっと受講している寺子の方に「熱中寺子屋」の魅力を伺ってみると、こんな答えが返ってきました。

「毎回の講義で、知らない世界の扉がちょっとだけ開くんですよ。1時間半だけだと分からないこともあるから、そこから気に入ったこと、気になったことをネットで調べたり、実際見に行ってみたりしています。テレビだと聞き流してしまうテーマでも、生で聴くことで興味が湧くことも多いんです」。

 

4月からの第8期も多種多様なテーマと講師陣が勢ぞろい。世界を広げたい方、仲間を見つけたい方は、まずは見学からでも参加してみては?

 

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「高岡熱中寺子屋 第8期」

・日 時  令和2年4月18日(土)~9月19日(土)13:00~16:30

           ※5月15日(金)、9月23日(水)は課外授業(自由参加)

・会 場  国宝・瑞龍寺 大庫裏 ほか

      ※初回4月18日はネット配信予定

 

・日程・参加方法等

 https://www.necchu-terakoya.com/blank-4

・講師陣とテーマ

 https://www.necchu-terakoya.com/7

 

 

 

◎高岡熱中寺子屋

https://www.necchu-terakoya.com/

https://www.facebook.com/necchuterakoya/

 

 

人と出逢い、技の文脈を知る旅【クリエイター向けモデルツアーin高岡(2019.11.22-23)レポート#2】

2020.01.29 UP

高岡市の主催により、11月に実施した高岡でのクリエイター向けモデルツアー「Creators Meet TAKAOKA」。多様なジャンルの12名の方に参加いただいたツアーを、同行したライターの視点からレポートします。

>>前編はこちら

人と出逢い、技の文脈を知る旅【クリエイター向けモデルツアーin高岡(2019.11.22-23)レポート#1】

 

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02.行政とお寺。ものづくりを支える様々なアクター

そうした高岡の職人たちを支えるもののひとつに、県や市といった行政の取り組みがある。今回のツアーでは富山県総合デザインセンターと高岡市工芸デザインセンターに訪れ、さまざまな支援策について教えてもらった。その充実ぶりが、なかなかすごい。

たとえば高岡市工芸デザインセンターには鋳造、彫金、漆の工房があり、50年前から続く後継者育成事業には今年も多くの人が参加している。富山県総合デザインセンターには最新のVRスタジオや各種3Dプリンタ、デザインCAD、モデリングマシン、撮影スタジオといった設備があり、誰でも低価格で利用することができる。さすが製造業従事者率が日本一の富山県だ。

さらに、能作をはじめとする高岡の伝統産業ではかなり早い時期から外部プロデューサーやデザイナーとの協業がされているのだが、その関係を初めに繋いだのは高岡市の事業だったというお話をうかがう。現在でも高岡クラフトコンペや富山デザインウェーブなど、技術伝承、製品開発、販路拡大、情報発信と、さまざまな領域でものづくりを活性化するためのプロジェクトが動いている。

 

 

アイディアや要望と、工房や技術をつなぐことには自信があると富山県総合デザインセンター・相談員の吉田絵美さん。

「長年の取り組みがあってのことなので、マッチングには高い精度があると自負しています。高岡や富山の技や人と一緒にものづくりをしたいという方、やってみたいことがあれば、ぜひ気軽に相談してみてください」

 

 

もうひとつ、高岡の工芸と深い関わりを示すのがお寺の存在だ。

1300年の歴史をもつ浄土真宗寺院、飛鳥山・善興寺では、銅製の仏具がもっともフォーマルな形式で配置されているのを見ることができた。

「ここに表現されているのは、仏様の悟りの世界です。そうした見えない世界を具現化したところに高岡銅器のルーツがあります」と話してくださったのは住職の飛鳥寛靜(かんじょう)さん。

高岡銅器の製造元では、主に仏具を作っていた、もしくは現在もそうであるという話を良く聞く。なぜ仏具が必要とされたのか、なぜその技術が継がれてきたのか。見えない世界を具現化したという言葉に、高岡銅器のこころが信仰と深く結びついていたことを知る。お寺はとても深いところで、高岡のものづくりを支えてきたのだ。

 

飛鳥さんはまた、「いまは伝統技術をつかった新しいものがたくさん作られているけれど、どうも精神性がともなっていないように思う」とも言う。

「技術はあるけど想いがないとお寺で言われたことにハッとしました。自分が扱う工芸品に関して、始めた人はどうして作ろうと思ったのか、もっと知りたいと思いました。その上で現代の人がほしくなるものをつくっていきたい(伝統工芸メーカー・企画販売)」

高岡の伝統工芸はただ長く続いてきたのではない、そこには必要とされる必然があった。ルーツを知ると精神性の重要さもまたずしりと重く感じられるのだった。

 

 

03.人と土地の文脈を知る ものづくりの起点となる旅

さらに今回のツアーでは、江戸時代の職人町「金屋町」、明治時代の商人町「山町筋・山町ヴァレー」、海越しの立山連峰が美しい「雨晴海岸」、大伴家持が務めた国守跡に建つ「勝興寺」など、歴史の流れや高岡の自然風土を感じさせる場所にも立ち寄った。

「はじめはどうしてお寺に行くんだろうと思ったけれど、おかげで街全体の文脈がなんとなくわかりました。その文脈を積極的に利用することで、新しい価値をこの地域に根ざした形で表現することに挑戦したいと思います(化学メーカー・ロボット素材開発)」

技や人はそれだけでぽつんとあるのではなく、長い時間軸と大きな空間軸のさまざまな結びつきの中にあるものだ。だから技や人を育んできた土地を知ることは、厚みのある大きな視点で技や人を知ることでもある。いざ協業しようというとき、その土地の海辺に立った記憶が役立つこともあるかもしれない。

今はモニターを通じて、会議だけなら地球の裏側にいる人ともできる。写真も動画も、情報はいたるところに溢れている。けれど土地が持つ空気感はぜったいに、そこに行かなければわからない。

逆にいえば、ただ行くだけでわかることがある。街並みやその土地の光の中に身を置くことで、すっと身体に入ってくるものがある。百聞は一見に如かずの感覚は、情報技術が発達するほどかえって強い実感を伴うのではないだろうか。全身でその土地を感じる、そこに旅の醍醐味がある。

今ここにある技や人々の魅力。背景にあるお寺や海の風景。今回のツアーではその間を行き来することで、この土地の持つ全体感がじんわりと共有できたような手応えがあった。

そうして参加者それぞれが感じた「高岡」は、これからどういったかたちを見せてくれるだろう。

協業を形にして恒常的な活性化につなげていくためには、仕組みづくりや場づくりといった受け入れ側の課題も多くある。行政、DMO、それぞれの立場で課題解決に取り組みながら、今後に期待したいということで Creators Meet TAKAOKA は幕を閉じた。

訪れて終わりではない、起点としての旅。ここから何が生まれていくのか、楽しみで仕方がない。

「ここにあるのは滅多にない技術だから、ぜひ何か一緒にやりたいと思います。大事なのは関わる人が違う視点を持っていること。職人さんが夢物語のように感じることでも、話してもらえたら、意外とすっと実現できるかもしれない。まだまだそういう可能性がたくさんあると思います(ロボット開発・ソフトエンジニア)」

(同行ライター・記)

 

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【information】

Creators Meet TAKAOKA
◎日程:2019年11月22日(金)~23日(土)
◎実施場所:富山県高岡市
◎参加人数:11名
◎訪問先:能作(鋳物)、ウィン・ディー(デザイン・モックアップ製作)、シマタニ昇龍工房(鍛金)、富山県総合デザインセンター/高岡市デザイン・工芸センター、武蔵川工房(螺鈿細工)、momentum factory Orii(金属着色)、金屋町、飛鳥山善興寺、勝興寺、雨晴海岸、山町ヴァレー


 主催:高岡市

企画運営:一般社団法人 富山県西部観光社 水と匠 https://mizutotakumi.jp/

 

人と出逢い、技の文脈を知る旅【クリエイター向けモデルツアーin高岡(2019.11.22-23)レポート#1】

2020.01.27 UP

気持ち良い秋晴れの週末に、クリエイター向けモデルツアー「Creators Meet TAKAOKA」を実施しました(主催:高岡市)。広くものづくりに携わる人に向けて、高岡の職人技や歴史文化を紹介。街や伝統産業の活性化を目的に、新しい出会いや協業の可能性を探ってもらうことを目的にしたものです。

10月に渋谷ヒカリエで開催したトークイベント(>>詳細<<)で参加者を募集。プロダクトデザイナー、ソフトエンジニア、ロボットの素材開発、クリエイティブディレクター、百貨店の新規事業企画など、さまざまな分野でものづくりや企画に関わる12名の方に参加いただきました。

 

11月に渋谷ヒカリエで実施したイベントの様子。

 

今回のツアー参加の目的は、協業先を探してという直球のところから、東京と二拠点生活のための場所を探している、高岡の職人のファンであるといったところまで多種多様。なかには、すでに工芸ハッカソン(>>詳細<<)を機に、高岡の職人とのものづくりを始めているという方もいました。

ときに真面目に、ときに笑いをまじえながら進んだ濃密な二日間の様子を、今回のツアーに同行していただいたライターさんのレポートで紹介します。

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01.高岡の職人たちの人を惹きつける魅力

結論からいうと、参加者たちに何よりも響いていたのは高岡の職人の姿だった。

「率直に言うと、一緒にものづくりをしたいと思いました今はハードウェアでもソフトウェアでも簡単にコピーできてしまいます。その点、職人技にはオリジナリティがある。たとえば、ただ漆を塗るだけでは付加価値はつきませんが、工芸の技が機能と結びついた時に大きな差別化ができるのでは(ロボット開発・ソフトエンジニア)」

今回うかがった工房は、高岡銅器の能作、シマタニ昇竜工房、momentum factory Orii、高岡漆器の武蔵川工房の4つ。

それまで世になかった錫100%の製品開発で飛躍的な成長を遂げた能作では、ベテランから若者まで様々な世代の職人がいきいきと働く姿を目の当たりにした。照明やサイン計画といった細かなところまでデザインがいきとどき、整理整頓された工場の中を歩いていると、工場や職人という言葉のイメージがみるみる更新されていく。

シマタニ昇竜工房はお寺等でつかわれる「おりん」をつくる鍛金工房。日本に10人も満たない「おりん」職人の島谷さんは、「おりん」を楽器としてとらえ海外の展示会等で提案しているという。専門機関に分析を依頼したところ、音色の心地よさには科学的根拠があることもわかった。島谷さんの穏やかな話しぶりからはおりんづくりへの深い愛情が伝わってきた。

「職人さんの仕事には価値の高さゆえの壁みたいなものを感じていたんですが、おりんを楽器としてとらえたらどうなるかとか、要素を分解していって、自分も可能性を考えて良いんだと思いました。自分で勝手に作っていた壁をとりはらってもらった感じがします(広告会社・クリエイティブディレクター)

金属の化学変化を応用した着色の工房momentum factory Oriiでは、実際に金属の色を変化させる体験をさせてもらった。近年は薄い銅板への発色法を確立させ、建築やインテリアの領域に大きく躍進しているOrii。溌剌とした折井さんのたたずまいは、生業を持つ人ならではの魅力に満ちていた。

「金属の自然な変化を製品にするという姿勢に共感して、製品作りを一緒にやりたいと思いまし た。デザイナーに対してもオープンな姿勢が感じられて嬉しかったです。依頼の前に技術を知っておくことの重要性も実感しました。(デザイン会社・プロダクトデザイナー)」

武蔵川工房は螺鈿(らでん)細工を特徴とする高岡漆器の工房。0.1mmの薄さの貝を扱う繊細な職人技には誰もが思わず息を飲んだ。貝はとても貴重なものだから、作業の中で出る端材も全てとってあるという武蔵川さん。さっそく素材開発に関わる参加者が、ぜひ用途を検討してみたいとサンプルを持ち帰る場面もあった。

伝統の技を継ぎながら新しい商品開発、新たな領域に取り組む姿勢。何より「ものづくりが好きだ」と伝わってくる温度感。

「自分の手でものを生み出す職人は格好いい」

「一緒にものづくりがしたい」

「また会いに来たい」

工房に足を運ぶごとに、参加者たちの高揚感がひしひしと高まっていくようだった。技術はもちろん重要だけれど、人を動かすのは人なのだ。

「職人さん達とは都内の展示会等での面識がありましたが、ホームでお会いすると、ずうっと格好いいですね。やっていきたいことへの想いがあって、伝統的なことから脱皮していきましょうっていう姿勢があって。ぜひ何らかの企画を具体化したいと思います(百貨店・新規事業企画)」

(同行ライター・記)

 

>>ツアーはものづくりを支えるファクター、行政やお寺の見学も!後半へ続きます。

人と出逢い、技の文脈を知る旅【クリエイター向けモデルツアーin高岡(2019.11.22-23)レポート#2】

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【information】

Creators Meet TAKAOKA
◎日程:2019年11月22日(金)~23日(土)
◎実施場所:富山県高岡市
◎参加人数:11名
◎訪問先:能作(鋳物)、ウィン・ディー(デザイン・モックアップ製作)、シマタニ昇龍工房(鍛金)、富山県総合デザインセンター/高岡市デザイン・工芸センター、武蔵川工房(螺鈿細工)、momentum factory Orii(金属着色)、金屋町、飛鳥山善興寺、勝興寺、雨晴海岸、山町ヴァレー


 主催:高岡市

企画運営:一般社団法人 富山県西部観光社 水と匠 https://mizutotakumi.jp/

 

フランスで開催の「ジャポニスム2018」で、高岡の伝統技術を紹介

2019.03.22 UP

日本とフランスの両国が連携し、芸術の都フランス・パリを中心に“世界にまだ知られていない日本文化の魅力”を紹介する大規模な複合型文化芸術イベント、「ジャポニスム2018」※。

約8ヶ月に及ぶ期間中に開催された、日本のものづくりの原点や日本各地で受け継がれてきた匠の技と美を総合的に紹介する公式企画「伝統と先端と~日本の地方の底力~」(2/5~2/24)へ、高岡も出展。高岡銅器の展示販売に加え、企画イベントとして映像の上映が行われ、多くの人で賑わいました。

日本各地のイノベーティブな取り組みを行う伝統技術が展示された

 

展示販売では「おりん」が好評

 

現地時間の2/8(金)、9(土)には、釈迦三尊像再現プロジェクト映像「国宝仏の再現に挑む Ⅰ、Ⅱ」の放映と「高岡市の伝統工芸技術」をテーマとしたトークイベントを開催。

トークイベントでは高岡の職人も法被を着て登壇。左から梶原製作所・梶原氏、金田商店・金田氏

 

「皆で力を合わせて作ったことが伝わってきた」「素晴らしい映像だった、高岡の鋳物技術を見てみたい」という感想に加え、「今後、海外での展示予定はあるのか」「若い人が高岡の鋳物業界で働きたいと思うか」など、高岡市の伝統技術に対して高い関心がうかがえる質問が寄せられました。

フランスと高岡。いずれも、連綿と受け継がれた歴史や文化を持つ地です。互いへの理解を深めながら、これから生まれるあらたなつながりの手応えを感じる、貴重な機会となったのではないでしょうか。

 

※ジャポニスム2018:日仏友好160年にあたる2018年に向け2016年5月、安倍総理大臣とフランスのオランド大統領(当時)によって開催が決定した、日本文化の素晴らしさを世界へ発信する取り組み。「ジャポニスム2018:響きあう魂」というタイトルのもと、2018年7月~2019年2月までの約8ヶ月間、縄文から最新のメディアアート、アニメ、マンガを紹介する「展示」、歌舞伎から現代演劇や初音ミクまでを紹介する「舞台公演」、さらに「映画」、加えて、地方の魅力発信に資する日本食・酒、祭り、伝統工芸などの「生活文化」といった4カテゴリー、合わせて70以上の公式企画・特別企画を、フランスパリ、ナント市で実施。総動員数は300万人を超えた。

太古の昔から人々を魅了した玉虫色の光を、インターホンパネルに。【3/16〜3/25「課題のデザイン展」レポート#2】

2019.03.20 UP

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*前半の概要

3月16日から3月25日までの期間、能作本社内NOUSAKU CUBEでは、高岡の伝統産業に携わる事業者の方々が新しく開発したプロダクトやパネルなどを展示する「課題のデザイン展」を開催しています。

前半では、参加企業の1つ、小泉製作所さんにお話を伺いました。

高岡の伝統技術から生まれた、斬新な音響クラフト。【3/16〜3/25「課題のデザイン展」レポート#1】

https://bunkasouzou-takaoka.jp/blog/2019/03/18/kadaidesign_report1/

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小泉製作所さんに続き、「螺鈿インターホンパネル」をデザインした、(株)ナガエの今岡正和さんを訪ねました。

(株)ナガエは「ダイカスト」という鋳造方法を得意とする金属加工メーカーで、美術工芸品から工業部品まで、幅広い製品を一貫生産しています。今岡さんは同社でデザイナーとして活躍。「課題のデザイン」の研究会への参加は、主催者である高岡市デザイン・工芸センターさんからお声がけいただいたのがきっかけでした。「今までデザインの仕事が好きで続けてきたけど、そういう培ったものを生かして、もっと他の方に喜んでいただく働きがしたい。組織の中で仕事をしているので、組織の中での納得できる落とし所を見つけたい」と、参加を決意したのだそうです。

研究会で掲げたテーマは、「地域と関わるデザインの仕事」。誰と組んで、何を作っていくかを見つける最初の半年間が一番大変だったといいます。そしてタッグを組んだのが、同じく研究会に参加していた青貝塗師(螺鈿職人)の武蔵川義則さん(武蔵川工房)でした。

「研究会のなかで、武蔵川さんから『金属に螺鈿の魅力をうつす』という課題を聞いていたので、改めてお話を伺いに工房に行きました。そこで、金属ということもあるけれど、いろんな新しい分野にチャレンジされたいのだな、という意図を感じて、美術工芸品ではなく建材というのもありだと思い、武蔵川さんと検討しながら進めてきました」。

研究会が始まって約半年後の2017年11月、最終的に決まった方向性が「インターホンパネル」でした。実は以前も武蔵川さんの螺鈿技術を活かした商品開発をしたこともあった今岡さんですが、そのときは木材をベースとした現代仏壇でした。インターホンパネルは同社ですでに商品がありますが、伝統工芸を取り入れたインターホンパネル、あるいは建材はこれまでまだ商品化されていません。

(左)以前に今岡さんがデザインした、螺鈿の装飾を施した現代仏壇。(右)武蔵川さんによる貝貼りの様子

 

それから研究会で、安次富さん(研究会の監修者)にもアドバイスをいただきながら、約3ヶ月後の2018年2月に試作用のデザインや点数を決定。そして翌月には、3つのプロトタイプ(試作品)が完成しました。

左から、全面に螺鈿を入れた「天の川」、約半分の面積に螺鈿を入れた「啄木鳥(きつつき)」、そして室番のみ螺鈿を入れたシンプルなもの

 

アートパネルのような雰囲気を出し、室番がゆったり入るサイズを考慮した正方形のパネルで、マンションの屋内廊下に面した各室の内玄関での設置を想定しています。エントランスの照明に映え、キラキラ自然な輝きを放ってくれそう。1つ1つ手作業での装飾なので、一品ごとに仕上がりが異なるだけでなく、たとえばマンションの地名に関するマークを入れるなど、装飾もカスタマイズが可能です。

試作品の出来栄えは社内でも評判がよく、実際に目にした人は大概、螺鈿の放つ光の美しさに感嘆の声を上げるそうです。「螺鈿は、写真で見るのと現物を見るのでは全然その魅力の伝わり方が違うと思うんです。見る角度によっても光りかたが違いますし。貝の装飾品って太古の昔からあるじゃないですか。太古からそうやって人間を魅了してきたものは、誰が見てもすごいんだな、と思います」(今岡さん)。

また、今岡さんは「これからは、ただ経済のためだけにものづくりをするのではなく、SDGs(持続可能な開発目標)のような考え方にも意識を寄せたものづくりをしていきたいですね」といいます。たとえば、近年は里山の放置竹林が日本各地で問題となり、竹材の有効利用が求められていますが、その竹を活用した商品をデザインし、最近リリースしたそうです。竹材の商品は今回の「課題のデザイン展」とは別ですが、今後も課題解決と市場がマッチした素敵な商品をデザインしてくださるのが楽しみですね。

室内で物干しポールを着脱するフック。先端は木材のように見えるが、実は竹材を組み合わせたもの

 

螺鈿インターホンパネルの実物は昨年10月からの試験販売では展示されていなかったので、3月16日からの「課題のデザイン展」が初めての一般公開となります。気になる商品化ですが、今はまさに品質試験を含め、どう流通に載せるかという課題に取り組んでいるところだそう。それでも、「研究会で求められていることの1つの答えを出すことができたのではないか」と今岡さんは安堵の表情を浮かべます。実物を見るからこそ伝わる美しい輝きを、ぜひ現地に見に行ってみてください!

「課題のデザイン展」では、他にも(株)竹中銅器・(株)桜井鋳造による「素材の発見を活かしたデザイン」という課題を解決した、鋳肌で食材をおろす「おろし板」、宮越工芸(株)による「塗装技術の新分野展開」という課題を解決した意匠塗装の展示パネルなど、約20点を展示しています。

 

期間は3月25日(月)まで。能作のカフェIMONO KITCHENに立ち寄りがてら、覗いてみてはいかがでしょうか。

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「課題のデザイン展」

・日 時  平成31年3月16日(土)~25日(月)10:00~18:00

・会 場  ㈱能作 本社内 NOUSAKU CUBE(高岡市オフィスパーク)

・内 容

 新クラフト産業・デザイン育成事業「課題のデザイン」平成29・30年度における開発品、パネルなどの展示。 一部商品は、㈱能作 本社ロビーにて販売。

・参加企業 12社(14名)

 (株)秀正堂、宮越工芸(株)技術課、(株)小泉製作所、(株)駒井漆器製作所、(株)桜井鋳造、(株)竹中銅器デザイン室、(株)小泉製作所、(有)武蔵川工房、(株)ナガエ、(株)はんぶんこ、(株)大野屋、(株)砺波商店、sky visual works inc.     

・監 修 安次富 隆[プロダクトデザイナー、多摩美術大学教授]

・主 催 高岡市デザイン・工芸センター

 

 

 

 

 

高岡の伝統技術から生まれた、斬新な音響クラフト。【3/16〜3/25「課題のデザイン展」レポート#1】

2019.03.18 UP

3月16日から3月25日までの期間、能作本社内NOUSAKU CUBEでは、高岡の伝統産業に携わる事業者の方々が新しく開発したプロダクトやパネルなどを展示する「課題のデザイン展」を開催しています。

すでに昨年10月から先行して、能作本社のロビーにて一部展示販売が行われてきましたが(下記参考記事参照)、今回の展示は「課題のデザイン」に携わって商品開発研究を進めてきた方々の成果を総括して展示するものとなります。

 


●参考記事:

伝統産業に携わる企業のコラボで新商品続々!19種55点を展示販売中(2018.11.09)

伝統産業に携わる企業のコラボで新商品続々!19種55点を展示販売中(2019年3月24日まで)

https://bunkasouzou-takaoka.jp/blog/2018/11/09/kadai_design/


 

そもそもこの商品開発は高岡市デザイン・工芸センターの「新クラフト産業・デザイン育成事業」として行われてきたもの。平成29年度から定期的に研究会が開かれ、参加者の皆さんは監修者であるプロダクトデザイナー安次富隆(あしとみ・たかし)氏の指導も受けながら、新製品開発に取り組んできました。

 

ある日の研究会の様子。中央は小泉製作所の中島健太朗さんで、その向かって右が小泉俊博社長

 

新しく始まったNOUSAKU CUBEの展示では、12社・14名による成果品約20点が展示されますが、その開発の裏にどんなプロセスや思いがあったのか?が知りたくて、そのうち2社の担当者を訪ねてみました。

まず訪れたのは、小泉製作所さん。銅合金の鋳造および加工を行う企業で、特に音響クラフト製品の開発を得意とされています。

 

小泉製作所のショールーム。机の上にはユニークでおしゃれな音響クラフト製品が並ぶ

 

もともと明治22年創業時は主に美術工芸品の鋳造を手がけていた同社。以後も様々な工業製品や美術工芸品、銅器、仏具などを製造してきました。時代の変化に伴って仏具なども多様化するなかで、「仕事を待つだけの受け身の態勢ではなく、こちらから商品を提案していきたい」と、地元仏具問屋さんと新しい「おりん」づくりに取り組んだのが2004年のこと。そのなかで「りん[たまゆら]」が、見事翌年グッドデザイン賞を受賞し、以後音響クラフトの開発に力を入れるようになります。

 

>>りん[たまゆら]について

 http://www.g-mark.org/award/describe/30878?locale=ja

 

「価格競争に巻き込まれるのではなく商品の付加価値を上げ、楽しいものを世の中に出していきたい」「商品開発力を高めることに注力したい」と小泉俊博社長は言います。「課題のデザイン」の研究会に参加したのも、そういった考えからでした。

さてそんななかで、「課題のデザイン展」に出展する商品の1つが、この「kanpai bell」。

すでに2017年6月から販売を開始していて、国際特許も取得している。オリジナルの刻印が可能で、2個1セットで税別15,000円

 

とあるフレンチレストランで、バカラのような高級グラスで乾杯するお客様を心配そうに見守るお店のスタッフを見て、「もっと乾杯を楽しめるグラスが作れないか?」と思ったタイミングと、デザイナーさんから「鳴るコップが作れないか?」と相談を受けたタイミングが重なり、開発に至ったとのこと。

高さ約8cm・容量約20mlの、真鍮製のグラス。グラスを合わせて「乾杯」すると、その場も清めてくれるような心地よい音が鳴り響きます。綺麗な音色を実現するため、真鍮にシリコンを入れ、より金属を硬くしているのだそう。今年4月には「ミラノデザインウィーク」にも出展するそうで、今後海外への販路も広がっていきそうです。

 

小泉製作所さんからはもう1つ。「課題のデザイン」監修者の安次富さんがデザインした「kicca」という益子焼のプロダクトを基に、音が鳴る機能性を付加したオブジェ。

天板の上に載せて叩くと、水琴窟のような独特の音が鳴る

 

元のデザインは陶器製だったものを精密鋳造で金属におきかえたという、菊の花をかたどった美しい形のそれは、そこに在るだけで特別な存在感を出してくれそうです。

「チャレンジすることで会社は育つと考えています。難しいことに敢えてチャレンジする、という精神でこのプロダクト開発に取り組んでいます」と語る小泉社長。機能性よりも形の美しさ、音の美しさを追求しているというこの製品ですが、まだ未発売で、課題のデザイン展ではプロトタイプを展示するとのこと。

「kanpai bell」と「kicca」。ぜひ課題のデザイン展で音色を試してみてください!

 

続いて、高岡漆器の伝統技術「青貝塗」のインターホンパネルを開発した(株)ナガエの今岡さんを訪ねました。こちらは後編【3/16〜3/25「課題のデザイン展」レポート#2】(下記リンク)でどうぞ!

太古の昔から人々を魅了した玉虫色の光を、インターホンパネルに。【3/16〜3/25「課題のデザイン展」レポート#2】

 

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「課題のデザイン展」

・日 時  平成31年3月16日(土)~25日(月)10:00~18:00

・会 場  ㈱能作 本社内 NOUSAKU CUBE(高岡市オフィスパーク)

・内 容

 新クラフト産業・デザイン育成事業「課題のデザイン」平成29・30年度における開発品、パネルなどの展示。 一部商品は、㈱能作 本社ロビーにて販売。

・参加企業 12社(14名)

 (株)秀正堂、宮越工芸(株)技術課、(株)小泉製作所、(株)駒井漆器製作所、(株)桜井鋳造、(株)竹中銅器デザイン室、(株)小泉製作所、(有)武蔵川工房、(株)ナガエ、(株)はんぶんこ、(株)大野屋、(株)砺波商店、sky visual works inc.    

・監 修 安次富 隆[プロダクトデザイナー、多摩美術大学教授]

・主 催 高岡市デザイン・工芸センター