この形がこの字なの?!高岡市立博物館の「初めての古文書教室」に参加してみた【「初めての古文書教室」レポート】
以前にこのサイトでもご紹介しましたが、高岡市立博物館では、博物館や地域に所在する未調査資料の調査・整理を地域の人々の手で行うことを目的に、「高岡古文書ボランティア」が2015年に創設されました。
これに先立つ2012年、「高岡古文書ボランティア」の設立を目指して、古文書調査・整理はまったく未経験だけど興味がある!という方に向けた、「初めての古文書教室(年6回)」が始まり、以降毎年開講されています。
- 参考記事(2016.11.10):
その時代の一端を活き活きと見せてくれる“歴史の証言者”、古文書解読に挑戦しよう!「初めての古文書教室」、参加者受付中。/高岡市立博物館
その時代の一端を活き活きと見せてくれる“歴史の証言者”、古文書解読に挑戦しよう!「初めての古文書教室」、参加者受付中。/高岡市立博物館
今回、この「初めての古文書教室」第5講(2018/11/8実施)に参加してみましたので、その様子をレポートします!
くずし字の解読に挑戦するのは全くはじめてな筆者はやや緊張。受付で、教材として使用されている古文書(※)のコピーが渡されます。
※ちなみに、「古文書」とは、基本的に江戸時代以前の紙に墨で書かれた古い手紙のことを言いますが、高岡市立博物館の古文書ボランティアおよび古文書教室では、広く近代の古記録等も含めた歴史資料全般のことを指しています。
そっと一番後ろの席に座り、いざ聴講開始。
今回解読を進めたのは、文政四年(1821年)に出され、天保三年(1832年)に写されたとされる「御定書」の一部。村の農民たちへの「戒め」として書かれたものです。講師の仁ヶ竹主査学芸員によると、この写本は村の肝煎(「きもいり」。リーダー的な役割をしていた人)によるもので、この写本じたいが、当時のこどもたちの書道の手本にもなっていたそうです。
そう、当時の人は楷書ではなくくずし字を習ったのだとか。中世の「青蓮院(しょうれんいん)流」という書体を徳川家が採用したので、「御家(おいえ)流」ともいわれました。江戸時代には公私や身分を問わず広まった書体です。
それにしても、1つの漢字でも何通りものくずし方があることにまず驚きます。昔の人は、一人で何通りもくずしていたのか?どんなくずし方でも読めたのか?などなど、いろいろ興味が広がります。
講義では、1文1文、1単語1単語ゆっくりと解読と解説が進められていきます。この形はこの文字なの!?という驚きとともに、「筋目」(=血筋・家計)、「頭振り」(=自分の田畑をもたない人)、「慮外」(=常識では考えられない)など、現代の普段の生活では使わない単語に出会って意味を知るのもまた興味深いです。
今回解読した文章は、たとえばこんな具合です。
- 諸奉行ニかきらす何レ江対シ候而も、慮外成躰、且又不作法仕間敷事
=諸奉行や侍に対し、常識では考えられないようなこと、かつまた不作法なことをしてはならない。
- 切支丹宗門御吟味ニ逢候末々之者、出生之者、或ハ養子聟嫁妻子与出来之者候は、早速可及案内候、死去跡之儀、可断筋目まがい不申様ニ可仕事
=キリスト教の宗門取り締まりにあった子孫や養子、婿、嫁、妻子などは速やかに上に報告しなさい。血筋が混じらないようにしなさい。
実際の古文書をゆっくり読み解くなかで、「士農工商」や「キリスト教の弾圧」など、歴史の授業で習ったことに通じるような内容に出会うと、教科書で読むのとは異なる、リアルな歴史に少し触れられたような感覚。
今回の講座で読んだのは、実際に博物館にすでに展示されているものですが、古文書の読み方への学びを深めてボランティアとして地域の未整理資料の解読に関わっていると、地域の歴史文化の知られざる魅力が発見できるかもしれません。もしかしたら、歴史的新発見につながることも!?
2018年度の「初めての古文書教室」は終了してしまいましたが(次回は2019年9月以降開講予定)、「高岡古文書ボランティア」は2019年1月19日(土)、2月16日(土)、3月16日(土)に、引き続き高岡市立博物館にて実施予定です。初心者の方も見学可能とのこと。
少しでも気になる方は見学から始めてみてはいかがでしょうか?
■問い合わせ先
高岡市立博物館
〒933-0044 富山県高岡市古城1-5
電話0766-20-1572/FAX 0766-20-1570
メールアドレス info@e-tmm.info
◎高岡古文書ボランティア設立趣意書
◎「初めての古文書教室」(2018年度チラシ)
http://www.e-tmm.info/komonjyo30.jpg