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開館5周年を迎えた高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーで新企画展がスタート!記念原画展「ゲラゲラ笑える話」を開催中(〜2021年11月28日)

2021.03.17 UP

高岡市出身のまんが家藤子・F・不二雄先生の作品には、たくさんの「笑い」がちりばめられています。

キャラクターたちのおかしな表情やオーバーな動作、コマとコマのあいだにある微妙な「間」などなど・・・。先生は「良質な娯楽を提供したい」という姿勢でまんがを執筆し、大好きな落語を聞きながら描くことも多かったそう。

高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーでは開館5周年を記念して、「笑い」をテーマにした原画展「ゲラゲラ笑える話」を開催中。代表作「ドラえもん」を中心に、「キテレツ大百科」「新オバケのQ太郎」「ポコニャン」「エスパー魔美」などの思わず笑ってしまうギャグシーンの原画を厳選して展示しています。読者を楽しませようとする先生の温かいペンタッチを、間近で見るチャンスです。

また、ギャラリー内には開館5周年を記念して新たなフォトスポットが登場しています。「ゲラゲラ笑える話」で笑った後は、キャラクターたちと一緒に写真を撮ることができます。

5周年を迎え、見どころが盛りだくさんのギャラリーをこの機会に訪れてみてはいかがでしょうか。

このほか、高岡駅ではドラえもんとのび太の新イラストが描かれた新企画展の大型タペストリーを掲示しているほか、今後、万葉線でもふるさとギャラリー開館5周年を記念した1日フリーきっぷが販売される予定です。アニバーサリーイヤーならではの企画がもりだくさんですので、ぜひご注目ください。

新設されたフォトスポットでは、ベレー帽をかぶったドラえもんたちが出迎えてくれる ©Fujiko-Pro

 

5周年記念原画展「ゲラゲラ笑える話」

・会期:令和3年3月4日(木)~令和3年11月28日(日)(予定)

    第1期・・・令和3年3月4日(木)~5月30日(日)(予定)

    第2期・・・令和3年6月1日(火)~8月29日(日)(予定)

    第3期・・・令和3年8月31日(火)~11月28日(日)(予定)

 

・会場:高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー

   (高岡市中川1ー1ー30 高岡市美術館2F)

・開館時間:9:30 〜 17:00(入館入場 16:30まで)

・休館日 月曜日 ※月曜日が祝・休日の場合は開館し、翌平日に休館

・観覧料:一般・大学生 500円

 

>チラシはこちら<

 

 

◎高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー

https://fujiko-artgallery.jp/

 

 

約110点の芸文大生・院生の作品と論文。今年はオンライン展示も!(GEIBUN 12開催中〜3/7まで・於:高岡市美術館/富山大学高岡キャンパス)

2021.03.03 UP

芸文(GEIBUN)の愛称で親しまれ、芸術と社会を結びつけて考える『芸術文化』という概念を核に研究・教育を進める富山大学芸術文化学部の卒業・修了研究制作展が、3月7日(日)まで開催されています。

今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、高岡市美術館と富山大学高岡キャンパスの2会場にて実施。学部卒業生・研究科修了生の作品・論文あわせて約110点を展示しています。

 

本展では、「人文科学系」「社会科学系」「自然・応用科学系」の3つのセクションで展示を構成。全国的に珍しい、総合大学の中の芸術系学部らしく、芸術分野の既存のカテゴリーを超えた、より広範なカテゴリーで、多角的で融合的な研究の成果を見ることができます。

 また、全出品作品の詳細情報が富山大学のウェブサイト(>>リンク<<)で公開されています。会場に行くのが難しい方も、会場に行く前にどんな作品があるか見てみたい方も、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。

 

GEIBUN 12

富山大学芸術文化学部/大学院芸術文化学研究科

第12回 卒業・修了研究制作展

 

・会期:開催中〜 3月7日(日)

・会場:第1会場|高岡市美術館  

    第2会場|富山大学高岡キャンパス

・開館時間:9:30 〜 17:00(入館入場|16:30まで)

・観覧料:無料

 

★GEIBUN 12 チラシはこちら https://www.e-tam.info/img/2020/G12/G12_sns_0216.pdf

 

<メイン画像の作品>

画像左上:「食」の中に秘められた「音」を楽しもう!/村上 藍子 (>>説明<<)

・画像左下:Oasis/百石 結衣(>>説明<<)

画像右:泉屋博古館青銅器の3Dデータのデザイン活用と展開(一部)/佐々木 果穂(>>説明<<)

 

 

 

◎GEIBUN 12 特設サイト

http://www.tad.u-toyama.ac.jp/special/geibun12/index.html#works

◎富山大学芸術文化学部

http://www.tad.u-toyama.ac.jp/

2月13日は日本遺産の日!高岡が織りなす2つの日本遺産ストーリーを学ぼう

2021.02.13 UP

地域のもつ歴史や文化をわかりやすく伝える物語として文化庁が認定する「日本遺産」。現在全国で104件の「日本遺産」が認定されており、そのうち2件が高岡にまつわる歴史・文化の物語です。

 

高岡市各所には、これらの物語をより深く理解するための文化財が多くあります。高岡市では、日本遺産の日にちなみ、2つのイベントを開催します。

 

1)写真家 中西学が写す日本遺産」(場所:山町ヴァレー)

2)日本遺産の文化財を巡ってオリジナルシールを集めよう(場所:市内各所の文化財)

 

それぞれの説明の前に、まずはこの2つの物語について簡単にご紹介しましょう。

 

開町直後の最悪のピンチを最高のチャンスに変えた、奇跡的な大転換

1つは、「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡―人、技、心―」。高岡のまちは約400年前に前田利長が築城したことによって開かれましたが、開町まもなくお殿様は他界し、さらに一国一城令によって高岡城が廃城されるというピンチに見舞われました。

そのピンチをどのように乗り越え、発展していったのか。時のお殿様の英断と町民たちの心意気を伝える物語です。

 

▼詳細はこちら

https://www.city.takaoka.toyama.jp/bunsou/story.html

 

北前船は荒波を漕ぎ進む「動く総合商社」だった!

もう1つは、「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 〜北前船寄港地・船主集落〜」。高岡市伏木は、江戸・明治期には北前船の寄港地・船主集落として大いに賑わいました。北海道と大阪を結び、一往復で現在の一億円に相当する利益を上げたとも言われる北前船は、物資だけでなく多彩な文化や情報を運びました。これは、動く総合商社と言われた北前船の歴史と、地域の近代化に与えた影響を伝える物語です。

 

▼詳細はこちら

https://www.city.takaoka.toyama.jp/bunsou/kitamae.html

 

写真家・中西学氏が最高画質で撮影した高岡の歴史・文化遺産

土蔵造りのまちなみ、山町筋にある商業施設「山町ヴァレー」で、日本遺産に関する写真展示を行います。

四季の美しさに彩られた高岡市の歴史・文化遺産をテーマに、その魅力を写真家・中西学氏独自の切り口でお届けするものです。

作品は、令和2年2月に東京「富士フイルムイメージングプラザ」で、12月から令和3年1月にかけて「ミュゼふくおかカメラ館」にて開催された写真展「躍動~Takaoka’s History and Culture~」の作品の一部。

氏の写真を通して、本市の日本遺産をどうぞ、お楽しみください。

・会期:2021年2月13日(土)〜3月2日(火)

・会場:山町ヴァレー(富山県高岡市小馬出町6)

・時間:10〜18時

 

▼中西氏の作品は動画でもご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=rr3aUHNaYkU

【中西 学氏 プロフィール】
1976年岡山県生まれ。風景写真を元々専門で撮影をし、近年はドローン写真家としても活動。2016年に行われた伊勢志摩サミット開催時には、三重の空撮写真(ドローン)のみの写真展をソニーストア名古屋とイギリスの日本大使館で開催。写真家目線での動画撮影、編集も数多く手がけている。

 

まだ行ったことのない高岡の文化財へ、ぜひこの機会に!

日本遺産にまつわる市内の文化財の一部では、上の写真右のイベント情報紙「iku・cha!」を持参するか、iku・cha!のPDF(▶リンク)を提示すると、入館した人に各文化財のオリジナルシールをプレゼント。シールは全部で6種類なので、全種類制覇に挑戦してみては。(iku・cha!は各対象施設に配置)

・配布期間:2021年2月13日(土)〜4月7日(水)

・対象の施設(対象の文化財/料金/休館日/住所):

  • 高岡市立博物館(高岡城跡・古城公園/無料/月曜〔祝・休日の場合は翌平日〕/高岡市古城1−5)
  • 高岡御車山会館(御車山祭/高校生以上 450円→360円〔iku・cha提示による割引料金〕/火曜〔祝・休日の場合は翌平日〕/高岡市守山町47−1)
  • 高岡市鋳物資料館(金屋町/高校生以上 300円/火曜〔祝・休日の場合は翌平日〕/高岡市金屋町1−5)
  • さまのこ屋(吉久/無料/月・火曜/高岡市吉久2丁目3−14)
  • 雲龍山勝興寺(勝興寺/高校生以上 500円/無休/高岡市伏木古国府17−1)
  • 雅楽の館(菅笠問屋の町並み/無料/月・火曜〔祝・休日の場合は翌平日〕/高岡市福岡町福岡1208)

 

 

【参考】

◎勝興寺

現在、平成の大修理によって江戸時代後期の状態に復元された書院が公開中。宝物展を行っています。

https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/323109

 

◎高岡市立博物館

「またまた発見!渋沢栄一書簡」〔2月13日(土)~4月11日(日)〕

https://www.e-tmm.info/nenkan2020.htm#2020ex1-4

技と経験値と発想の出会い Creators Meet TAKAOKA プロトタイプ発表

2021.01.05 UP

 

高岡に雪が降った師走のある日、いよいよ各チームから今取組みにおけるプロトタイプが届けられた。10月のキックオフツアーからわずか2ヶ月にも関わらず、発想が着実に具現化されているサンプルや音源の数々は、いずれも出会いから始まったものづくりの歓びに満ちていて、率直に「欲しく」なるものばかり。さっそく、順番に紹介していこう。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが取り組んできたのは『燭台』。

「溶かして」つくる高岡銅器の鋳造工程が、視覚的に表現されたポップなデザインが特徴だ。溶けてみえる上部は鏡面加工、土台となる下部は鋳肌そのものと、真鍮の違う表情がひとつの製品に同居している。

蝋燭のロウが溶けて溜まっていく姿はどことなく野暮だが、この燭台なら溶けたロウと燭台が連続的につながって、美しく感じられそう。

「燭台は製品としてはあるんですが、うまく展開していくものはこれまでにはなくて。販路の広がりをつくれたら、すごく面白くなると思います(能作:磯岩さん)」

「能作さんといえば錫のイメージが強く真鍮製のものは少ないので、この燭台が真鍮の商品を代表するものになったら嬉しいなと(Hamanishi DESIGN:鎌田さん)」

 

デザインを主に担当したHAMANISHI Design代表の濱西さんは、プロダクト開発のスピード感に驚いたと言う。

「能作さんのデザインリテラシーが凄く高いんだと思うんです。ぼくらのディティール、マテリアルを大事にしたいという想いと、長い歴史を現代的な解釈で形にしたい、それらの意図を汲み取った製造をしてくださっている。理解がないと、鋳肌と鏡面加工の同居って面倒臭いはずですから。ここまでスムーズすぎて、怖いくらいです。笑 (HAMANISHI Design:濱西さん) 」

このチームでは和蝋燭も開発中で、燭台と蝋燭のセット販売を検討している。仏具としてではなく、文具やインテリアといった売り場で、「炎を眺める時間」をひとつのライフスタイルとして提案していきたいという。

 

 

漆と現代を結ぶまるい「縁・円」

漆器くにもと×三井化学MOLpからは3つのラインでの商品・企画案が提出された。

サンプル試作が進んでいるのは、経年変化を楽しむ漆のアクセサリー「縁EN・輪WA」。

三井化学が誇る技術力によって開発された、海のミネラルから生まれた樹脂「NAGORI™樹脂」 と、植物由来のウレタン樹脂「STABIO®」で成型したアクセサリーに漆を塗布。太陽光によって経年変化する漆の魅力を、身につけるものから伝えたいという。

 

NAGORI™樹脂は陶器のような温かみと重さ、STABIO®は柔らかさと透明性が特徴。それらと漆との組み合わせによって、木地を基本とするこれまでの漆製品にはない、重みや透け感といった新たな質感の創造が期待される。色は朱、黒、溜塗、白檀塗の4色で、小さな球状のものと、大きな輪っかのタイプの2種類で展開する。

NAGORI™樹脂による「縁EN」のサンプル。いわゆるプラスチックの安っぽさを感じさせない

「輪WA」の3Dスケッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この素材に漆を乗せて何の意味があるのか?という点でずっと悶々としてきました。プラスチックと一言で片付けられない、漆に対抗できる素材でなければいけない。今回ひとつ「重さ」を付与することで、どういった反応になるのか知りたい(MOLp:宮下さん)」

「漆器業界にはプラスチック=偽物のイメージがありますが、プラスチックと一言に言っても様々なものがある。生分解性や熱に強いなど様々な機能を付加できるので、そこに工芸の精神を加えて、今の生活に対応できるものを目指せたら面白いなと。漆器だからいいんじゃなくて、素晴らしいものだから欲しい、その第一歩として樹脂の良いものがつくれたら(漆器くにもと:國本さん)」

その他、和紙と三井化学のポリオフィレン合成パルプ「SWP®」と漆のコラボレーションアイテム企画、漆器くにもとの地場ネットワークをいかした金属製の防音ボードの台座製作も進行している。

アクセサリーはスケジュールが間に合えば、来年3月に青山で行われるMOLpの展示会でお披露目、先行予約を受け付ける予定だ。

 

 

マテリアルと表面処理の可能性

竹中銅器とTakashiTeshimaDesignから届いたのは、4つの方向性から表面加工の可能性を探る取り組みの数々。一旦すべてのアイディアを具現化し、そこから製品化に進めるものとそうでないものとを精査していくという。

 

Re Produce :「つくらないでつくる」「解体と再構築」といったテーマで、既存の香炉や花器などを切断し、いくつかの製品に再構築する。

 

TOYAMA : 黒部渓谷を表現したトレイと箸置きのセット。トレイの青は銅の緑青、箸置きの赤は漆。高岡の産地内でつくりだせる色や質感の幅広さが感じられる。

 

Still we live : 外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。ヒビの入った金属塊にはかなりの迫力がありそう。使いながら緑青の色を育てていく面白さも。

現在はブロック塊でサンプルを試作中

 

Gradation : 鏡面加工から緑青による着色の色だけでない質感のグラデーションをみせるもの。花器またはタンブラーを想定している。

 

「職人さんがムラだと感じる製品ごとの色の違い、グラデーションのばらつきが、かえって一点ものとしての魅力に感じます。とにかくおもしろくて膨らませすぎたところもあるんですが、素晴らしいスピード感で試作を進めていただいるので、まずはすべてのイメージを形にしたいです (TAKASHI TESHIMA DESIGN:手嶋さん)」


「慣例的にやろうとしないこと、思い込みでやならないことを手嶋さんからやってみようといわれて、試して気づかされることがすごくありました。今回色々とトライしてみて、全てが今後のノウハウになるととらえています。グラデーションなんて、ありそうでなかったことかもしれません。海外の展示会なども意識して、販路を考えていきたいと思います (竹中銅器:喜多さん)」

 

 

 

View Point (ビューポイント) 三次元の国旗

佐野政製作所とshy shadowのチームがつくるのは、三次元で表現した国旗のオブジェ「View Point」。

「イメージの枠外から来た、全く予想していなかったアイディアでした。絶対に世の中にない、凄く良い、ぜひやりたいと。独特なカーブや段状の形など、自由に形を作れる鋳造の良さも活きます。持った時の金属の重さも感じてもらえたら (佐野政製作所:佐野さん)」

写真は木型で、完成品は真鍮製を予定。着色はせずに、表面加工で色の違いを表現する。大きさは6cm×4.3cmほど。

NYで20年以上働き、今年1年は旅をしながら日本に滞在しているというshy shadowの芳村さん。現在は赤坂に居を構え、飛び込みでの販売交渉のための店舗リストを佐野さんと作成中だという。

「あちこち散歩しながらインテリアショップをまわってます。ファッションブランドもいいかもしれない。妻がアメリカ人なので、一緒に行くと格があがるんですよ。外国人が好む製品ですよって話もできる。笑。直接ドアを叩いていくのは抵抗ないので、行かない手はないかなと」

「こうしたものづくりの機会がずっと欲しかったんです。こうやって出会えて、光栄で感動しています。佐野さんも、木型の工房の方も、みんなそれぞれに専門分野を持つアーチストです。アーチスト同士が集まってつくるものって、自我にとらわれてない、きれいなものだなって思います」

「表情豊かなものなので、手に持って、あらゆる角度から彫刻的にみてほしい。ある物事を違う角度からみたらどうなるんだろうと、このオブジェが視野を広げるきっかけになれば (shy shadow:芳村さん)」

 

 

 

Vague (ヴァーグ) おりんの奏でる音楽

シマタニ昇龍工房×未音(ひつじおと)制作所から届いたのは、おりんを使った楽曲たち。

おりんを鳴らした音とおりん制作時の音(焼成音など)のみをプロセッシング(音の波形の一部分を切り取ったり、表情を変えたりすること)し、おりんをつくる過程をコンセプチュアルに表現した5曲の楽曲を制作する。

「おりんそのままの音と加工した音を組み合わせて、いろんな表情で表現しています。おりんの音は純粋音に近い、すごくきれいな波形を持ってるので、加工しても混ざり物のない、きれいな音になるんです」

楽曲は全方向から音がまわって聴こえるような、5.1chサラウンド立体音響再生可能環境を想定。勝興寺でのオンラインライブ(観客を入れるかどうかは検討中)およびインスタレーションの発表を目指す。動画・写真のアートワークも制作し、CDと合わせて商品として流通するものにしたいという。

また若狭さんは同時期に金沢、高野町、東京でも別ユニットでの作品発表を予定しており、それらとの連携、さらにはフランス/ドイツのエレクトロミュージック、アートコンペティションへの応募も計画している。

「ずっとおりんを仏具ではなく楽器として提案したいと思っていたので、こういう機会をいただいて本当に嬉しい。録音の際には一番小さいおりんもすごくよく響いて、お寺の音響の良さにも驚きました。おりんをつくっている自分自身もパワーをもらう、心が豊かになる経験でした (シマタニ昇龍工房:島谷さん)」


「お寺にあんなふうにおりんが並ぶのは、芸術作品としても感動的な空間でした。みんなで耳を澄ませて、普段は聞き逃してしまうような音を聞こうとした、それも美しいことだったと思います。おりんの音には、比喩じゃなくて、浄化されるものがある。インスタレーションとライブで構成される勝興寺でのイベントを、全国の様々なお寺でもやっていけたら (未音制作所:若狭さん)」

 

 

Sedge(セッジ)菅製のスピーカー

未音制作所と高岡民芸のチームから届けられたのは、菅製のスピーカー。

写真は骨組みの状態で、これからそこへ菅が編み込まれていく。プロダクトデザインは、Vagueでのアートワークも担う黒野真吾さんが担当した。

「実際に見るとかなりの物量と存在感、高級感があります。モダンさのなかに民藝的な、土地から立ち上るような空気感も感じられて、ほんとうに格好良いですよ (若狭さん)」

「つくっていると、発想が基本的に「笠」から離れないんですね。スピーカーなんて考えつかないんです。突拍子もない提案をもらえてすごく嬉しいし、つくっていてもワクワクして、楽しいです。今回の提案でイメージの枠を取りさってくださった気がします (高岡民芸:中山さん)」

大量生産ができないため、今のところは展示会等における大きな取引の商談は考えていない。まずはwebサイトの作成と、ホテル・旅館や店舗への直接交渉をイメージしている。

欲しいと思う人は1年や2年待っても欲しい、それくらいの力を放つと予感させるフォルム。ものとしての美しさはもちろん、ものに適した健やかな流通のあり方も切り拓く製品になることを期待したい。

 

どのチームからも聞かれたのは、工房のものづくりに対する真摯さ、製品化における諸問題に対応する経験値への信頼、クリエイターの新鮮な発想にはじまるものづくりの歓びといった声だった。

確かな技術・経験値と、知らないからこその発想が出会って、ひとつひとつの製品が高揚感のなかで生み出されている。そうした良い波長を持っている品は、求めている誰かにきっと届く。必要としている人に必要なだけ届き続ける、持続するサイクルがずっと紡がれていくことを静かに願った。

プロトタイプということで、価格設定や販路の詳細が決まっていくのはこの先。その後にも展示 会に出展したり、取り扱いの交渉があったりと、製品開発から私たちの手に届くにはまだまだ長 いプロセスを経る。

きっとどこかで目にするようになるだろう製品たち。もしも見かけたら、あのプロトタイプがこうなったのだと、高岡のこと、産地のこと、工房とデザイナーの皆さんの想いのことをぜひ思い出して、手にとってみてほしい。

 

未音制作所×シマタニ昇龍工房・高岡民芸 photo by Shingo Kurono

人がいて「もの」が生まれる、うねりと波長 Creators Meet TAKAOKA 2020 経過報告

2020.12.09 UP

キックオフツアーの開催から約1ヶ月。それぞれのチームで打ち合わせが重ねられ、製品化に向けてのサン プルや型づくりが順調に進んでいる。いずれもワクワクと完成が楽しみになるものばかりだ。

そんなある日、高岡・伏木にある古刹『勝興寺』にて、シマタニ昇龍工房×未(ひつじ)音制作所チームに よる「おりん」のレコーディングが行われた。

「おりん」の「レコーディング」とは?なんとも不思議な気持ちで現場に向かうと、本堂にはぐるりと置か れた大小様々な「おりん」たち。高い音から低い音まで、いくつもの音波がうねりになって、空間に響き渡っ ていく。この音から、何がつくられようとしているのだろう。 

 

体の芯に響く音

「細胞が活性化するみたい。お寺で聴くと、やっぱ、すごいですね」

未音制作所の若狭さんが興奮した面持ちで言う。「お寺で何かやるのは初めてなんですが、イベントとかラ イブじゃなくて、おりんで何かしたいとずっと思ってたんです。好きなんですよね、おりんの音」


手のひらサイズから数人がかりでないと運べない巨大なものまで、「とにかくありったけを持ってきた」と シマタニ昇龍工房の島谷さん。「おりん」たちが円形に並んでいる姿は、動物の群れにも似て、なんだか生 きているよう。

若狭さんはそのひとつひとつに内側と外側の二方向からマイクをあて、波長が消える最後の一瞬まで、音を 余さずに収めていく。マイクは円の中心にも全方向の音を拾うものが据えられ、個別に鳴らされた音と、全 ての「おりん」が鳴らされ響きあう音とが採集された。

時は夜。かすかな灯が燈されただけの敬虔な空間で鳴り響く「おりん」。体の芯に響く音は波のようで、次 から次へと寄せる波に飲み込まれて、別の場所に連れていかれる感覚になる。

「音は素材で、それをどう料理するかが音楽家の仕事です」と若狭さん。

現在予定されているのは、採集した音をもとに5曲程度のコンセプトワークのような楽曲をつくること。楽 曲はCDとしての販売や、暖かくなった春頃には勝興寺でのライブイベントも考えたいという。ぜひ高岡の この空間で、楽曲になった「おりん」を体感したい。

レコーディングの翌日には、菅笠の高岡民芸工房にて打ち合わせが行われた。進んでいるのは菅笠を利用し た「スピーカー」の制作。軽く質感の柔らかな、 インテリアに調和するものが目指されている。

こうした制作風景、音の採集風景は動画作品、またアートブックのようにCDと合わせて販売する案も計画 されている。音楽、写真、動画、ライブ…さまざまな方向から魅力を引き出される、おりんと菅笠。どんな 姿をみせてくれるのか、期待が高まる。

 

時の経過を感じる燭台

能作×Hamanishi DESIGNが製品化を進めているのは「真鍮の燭台」。昨年度のモデルツアーにも参加した デザイナーの鎌田さんからは、金属を「溶かして」つくる高岡銅器の製法と、ロウソクが「溶ける」現象を リンクさせさた、ロウソクの熱で燭台自体が溶けかかっているようなデザイン案が届けられた。

ゆらめく炎。静けさ。部屋を暗くしてロウソクの光で過ごす時間は、お寺の空間体験やおりんの音色にも通 じる、日々のせわしなさから離れた、ふっと息をつけるものになるはず。

燭台=必ずしも仏具ではないが、この製品を使う人が感じとるものは、仏具としての高岡銅器に連なる、精 神性を帯びたものかもしれない。

「まず何より、去年繋がった高岡とこうしてまたプロジェクトができることがとても嬉しいです。様々な縁 に感謝しつつ、種まきが実ったような喜びもあります。学生の頃からの憧れの企業である能作さんと一緒に ものづくりが出来ることにワクワクすると同時に、今クリエイターとして何をすべきかを考え、未来に向け た提案ができる様に、身を引き締めてプロジェクトに向き合おうと思います(鎌田さん)」

 

漆器にソザイを四則演算する

漆器くにもと×MOLpでは、大きく分けて3つのラインで取り組みが進んでいる。

1つは、漆に興味を持つきっかけとしての『アクセサリー』。「漆だから」ではなく、「欲しい」と手に取っ たものが実は漆だったという回路を開くことで、漆を知ってもらう。2つめは、もともと漆器くにもとさん へ依頼がきていた利賀村にあるオーベルジュへの提案食器。こちらは越中和紙も利用し、すべて富山の素材 を使った製品開発を進める。そして3つめが、食洗機と電子レンジに対応する漆器の開発だ。

「伝統的な漆器にソザイを四則演算することで、現代のライフスタイルに合わせた、漆器への関心を高める プロダクトを生みたい」というMOLpの皆さん。

四則演算するとはどういうことだろう?

「漆の性質はそのまま活かしながら、生地の木の部分を変えようと思っています。新素材を加え、掛け合わ せる、木を引く、木じゃなくてもいいと割り切る、、、食洗機と電子レンジに対応する漆器はすでにあるの で、他でやってないことを試みたい。詳しくはまだ言えませんが、楽しみにしていてください(MOLp宮下 さん)」

 

金属が経る時間の可視化

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGNが取り組むのは、4つのラインでの製品企画案。

1つは、竹中銅器に蓄積されてきた素地サンプルを分解して、別の商品に生まれ変わらせるというもの。例 えば香炉を輪切りにして小物入れに、花瓶を切断して二つのカップに。この製品は元は何だったのか?想像 を巡らせながら使うのも楽しそうだ。

2つめは、富山の代表的な観光スポット、黒部渓谷の色彩を再現する和食器と箸置きのセット。

3つめは、外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。水を注ぐことで 錆が進行し、質感が変化していくことを想定する。

そして4つめは、デザイナーの手嶋さんがキックオフツアーの際にも話されていた、金属のピカピカに磨か れた質感と、緑青がグラデーションで表現されたタンブラーなどの器。 磨きと、錆び=緑青といった金属の化学変化を利用した着色は、きらびやかさと侘び寂びの、ある意味で真 逆の価値観ともいえる。それが技術的にどう叶えられるのか、またそのものを見たときに私たちは何を感じ るのか、興味深い。

「高岡ツアーや工房見学から始まり、実際のデザインや試作まで、普段手掛けている量産プロダクトとは異 なった視点で取り組むことができ、非常に面白く興味深く取り組んでいます。部分的なサンプルが少しずつ 上がってくるなかで、当初の想像通りにはいかない点も出てきていますが、それらも含め、変化させながら ブラッシュアップしていければ(手嶋さん)」

 

国旗を三次元で解釈すると?

佐野政製作所×shy shadowのチームでは「三次元の国旗」のオブジェの木型サンプル製作が進行してる。

デザイナーの芳村さんは、当初は動物の形をした靴べらのイメージラフを起こしていたが、靴べらはよくあ る製品だということで仕切り直し。打ち合わせを重ねるうちに、芳村さんが以前から温めていた『国旗を3 Dにする』アイディアを提案、佐野政さんが強く気に入ったことで、方向性が一気に定まった。

「なんていうか、波長が合うんです。佐野さんと出会わせていただいたことを感謝してます。物事を常に違 う角度で観察する必要性を感じる最近、日本人、世界の人々があらゆる角度で自国、他国を見ることが出来 たら、新しく面白い発見があるのではと、オブジェを通じて問いかけられたら(芳村さん)」

素材は真鍮で、着色はせずに、サンドブラスト、ミラーフィニッシュなどの表現の磨き具合で国旗の色素を 表現する予定。「佐野政さんは表面加工のプロだと感じたので、その技が活きるものにしたい」と芳村さん。

国旗を三次元で解釈したらどうなるんだろう?ぜひつくってみよう!そうして意気投合して進んでいくもの づくり、なんだかとても楽しそうだ。

伝統の技術は技術としてあるものだけど、それを形にするのはそれぞれの人であり、その人らしさがその工 房らしさでもある。デザイナーや作家ももちろん、感性や発想を持った生身の人。

人がいて、ものがあるのであって、逆ではないこと。その先にはさらに、人がいること。Creators Meet TAKAOKAは、そんなことを改めて実感できる取組みかもしれない。

いよいよ次回は各チームの取組みがプロトタイプとして着地する。人と人の出会いがどんな結晶を生み出す のか、どうぞお楽しみに。

 

 

シマタニ昇龍工房×未音制作所 Photo by Shingo Kurono

産地の技の集積を知る Creators Meet TAKAOKA 2020 キックオフツアーレポート

2020.11.12 UP

立山連峰がくっきり望める秋晴れの気持ち良い一日。Creators Meet TAKAOKA2020のキックオフとなる高岡ツアーが開催された。

東京でのPRイベントとクリエイターを招いてのモデルツアーを実施した昨年。今年はもう一歩踏み込んで、実際にクリエイターと高岡の工房が協同し、作品や商品、素材をつくりだす、新たな展開をはかっていく。

今回の参加者は5組。うち2組が昨年度にひきつづいての参加、3組が新しい参加者だ。はじめに産地の全体像や風土を体感してもらおうということで、ツアーでは参加者全員で全ての協働先工房を巡った。

 

能作 × Hamanishi DESIGN

まず一行が向かったのは、高岡銅器を代表する鋳物メーカー「能作」の工場。鋳物場での鋳物砂を使っての鋳造工程に、研磨場での加工作業を見学させてもらう。なぜその作業をするのか、道具の配置や書いてある言葉の意味は…各々から発せられるクリエイターならではの質問に、お互いに刺激しあう場の空気が早々に醸成されていく。

案内してくれた磯岩篤さんは、商品企画を主に担当。昨年までは能作の東京事務所で働いていたが、高岡の人の魅力が忘れられず、今年から高岡に戻ってきたという。

一方の「Hamanishi DESIGN」のプロダクトデザイナー鎌田修さんは、昨年につづいての参加者。ちょうど社内で燭台をつくろうという企画がもちあがったときに、今企画を知った。

「昨年のツアーが強く印象に残っていて、燭台なら能作さんとやりたいと思っていたところだったんです。イメージもかなり明確に描けていて。室内で過ごす時間の質にこだわる人が増えた、今の感覚にフィットしたものができる気がしています」

すでに商品化への道筋もみえているようで、昨年度の種まきが見事に結実していくような嬉しさを感じる。出会いから生まれる、化学反応のようなプロダクト。おそらく私たちも手に取れるだろう製品を楽しみに待ちたい。

 

漆器くにもと × MOLp

つづいては漆器の企画問屋である、「漆器くにもと」へ。山町筋の土蔵を改装した店舗内には、高岡でつくれる様々な技法の漆器製品が並ぶ。いわゆる螺鈿細工である青貝塗りと彫刻塗りなど、代表の國本耕太郎さんが高岡の漆の技法について教えてくれた。

協働先となる「MOLp(Mitsui Cemicals Oriented Laboratory)」とは、三井化学社内のメンバーによって立ち上げられた有志グループ。主力製品であるプラスチックへの課題意識を背景に、素材が持つ感性的価値に着目し、社会に表現していく活動を行なっている。

3年前には表参道で展示会を実施し、太陽の光を受けると色が変わる糸を発表。展示会には様々なクリエイターが訪れ、アンリレイジ、ルイヴィトン、フェンディといった大手メゾンがMOLp発の素材をつかった製品を世に送り出した。

今回はMOLpから4人のメンバーがツアーに参加。そのうちの1人、宮下友孝さんは去年からの参加者だ。

「そのものをつくることで、職人さんの利が大きくなるような、強く動機付けできるものを考えたい。あとは、万年筆のような、樹脂製だけれど消耗品ではない、長く愛されるものをつくりたい気持ちもあって。形はまだ見えていないけど、想いは色々あります」

すでに来年3月にはMOLpの展示会が表参道で予定されている。今回の協働の成果も、そこで発表されるとのこと。思わずまだ見ぬ漆にまつわる新素材が、世界に羽ばたく未来を想像してしまった。

高岡漆器の勇助塗り、井波彫刻の欄間など、随所に名匠の技がうかがえる「土蔵造りのまち資料館」を見学した後は、山町ヴァレーにて昼食。「かねまつ食堂」さんの今ツアーのための特別魚づくしランチをいただいて、実は海も近い、高岡の風土を感じる時間になった。

 

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGN

「竹中銅器」は、高岡銅器産地で一番の規模を誇る企画問屋。90年代から建築家やデザイナーとのコラボ製作をはじめた、産地のさきがけ的存在でもある。店内は様々な製法の銅器製品が揃う、さながら見本市のような空間。

「新しい角度からの商品開発がしたい」とデザイン部長の喜多(きた)登さん。

「うちはいわゆるファブレスのメーカーです。自社工房を持たないかわりに、様々な技術を持つ工房とのマッチングが幅広くできる。今も産地内で50社以上とのものづくりが動いています」

対するお相手はプロダクトデザインに加えてファッションアイテムの製作販売もおこなう、手嶋隆史さん。

プロダクトデザインは理詰めで合理的に構築していく仕事だが、手触りの残る製品づくりにも惹かれ、ファッションアイテムをつくるようになった。そこから、伝統工芸にも興味を持ったのだという。

「竹中さんの社屋内にあるあらゆる銅器をみて、磨きによって現れる鏡面的なツヤと、素材の化学変化による着色、それぞれの全く違うテクスチャーに強く興味を持ちました。それらを同居させるのもおもしろそうだなと」

手嶋さんの言葉に、磨きと着色を全くの別ジャンルとして見ていたことに気づいた。ふとした発想に、外からの視点ならではの新鮮さを感じる。

この日のアイディアはあくまでも初見のイメージによるもの。この先どういった経過をたどって新製品が生まれるのか、発想の変遷も興味深い。

 

佐野政製作所×Shy Shadow

デザイナーの芳村明さんはアメリカの美大を卒業後、20年間アメリカのプロダクト業界の一線で働いてきた。今年は「もっと日本を知りたい」と、各地での出会いを仕事に繋げながら、日本中をまわる1年なのだそう。

「アメリカでは体験できない、とても貴重な機会だと感じています。ものづくりを具現化してくれる工房がなくなってしまうと、デザインの仕事も成り立ちません。全力で取り組むので、僕のことをどんどん使ってもらえたら」

一方の佐野政製作所はオーダーメイド品の受注製作やオリジナルの数珠かけを製作するメーカー。ゲーム会社が製作するキャラクターを象ったトロフィーなど、「他で断られた」難しい案件が舞い込んでくることも多い。

工房に到着してすぐ目にしたのは、螺鈿、彫金、着色と、様々な加工が施された金属のマグネット。銅器産地内の様々な加工技術の見本として、各工房に依頼して作られたものだという。

「分業というのが僕はとても良いと思っていて。依頼に対して、期待値を超える仕事をしてもらえることが多い。ひとつの会社で全部できると、そうはならないんじゃないかな」と代表の佐野秀充さん。

マグネットをみて、数枚のスケッチを起こして持参してきた芳村さんも、つくりたいもののイメージが変わったという。

「スペシャリストの匠が集まっている、産地の力を感じました。表面の仕上げの種類など、もっと詳しくうかがっていきたいと思います」

 

高岡民芸、シマタニ昇龍工房 × 未音(ひつじおと)制作所

音楽家である若狭真司さんは、今回二つの工房との協働を行う。それぞれの工房に対してすでに豊かなイメージが描かれており、どちらの可能性も捨てがたいということで、イレギュラーながら二社との協働が行われることになった。(今回は残念ながら日程が合わず、ツアーには不参加。)

ツアーも佳境に入る中で一行が向かったのは、菅の田んぼ。高岡民芸を営む中山夫妻は、菅を栽培するところから加工までを一貫して行っている。

福岡(高岡市・旧福岡町)の菅笠は時代劇や全国の祭などの需要に対してシェア9割を誇るが、元が農閑期の内職だったことから工賃が安く、高齢化と後継者不足が深刻化。そんななかで、中山煌雲さんは産地唯一の若手として、アートピースとして飾りたくなる菅笠づくりに邁進している。

「やったらやっただけ報われる、すごく可能性のある分野だと思ってます。新しいことも自由にできるから、どんどんやっていきたくて」と中山さん。

もうひとつの協働先は、「シマタニ昇龍工房」。職人の数が全国でも10人に満たない「おりん」をつくる鍛金の工房で、今年は曹洞宗大本山・永平寺のおりんの修理も行なった。

おりんづくりにおいて何よりも重要なのが、「調音」という音の調整作業。音色に耳を傾けながら、金属を叩くことによって、心地良い響きを生み出していく。感覚で身につけるしかない、一子相伝で伝わる調音作業は、代表の島谷好徳さんでも身につけるのに12年ほどかかったという。

「絶対音感があるかと聞かれたりもしますが、ないです。聞き分けられるのは「おりんの音」だけ。音楽的な才能があるわけではないんです」と島谷さんは笑うが、おりんに楽器的な要素があることは間違いない。

そして、協働する若狭さんは音楽家である。おりんを楽器としてとらえた時に何が起きるのか、期待せずにはいられない。

丸一日かけて、全6軒の工房を巡ったCreators Meet TAKAOKA2020キックオフツアー。メーカー、企画問屋、素材の栽培から製品化までを一貫して行う工房など、さまざまな現場を訪ねることで、高岡のものづくりの層の厚みを実感する1日になった。

それぞれの工房の背景には、長い伝統を持つ産地全体の技術の集積がある。その経験値と、クリエイターの発想が出会った時、どんな化学反応が起きるのか。今後の展開に注目したい。

 

 

人間国宝として現在唯一富山県内で活躍する作家・大澤光民氏の、軌跡と挑戦に触れる大規模回顧展、高岡市美術館で開催中!(〜10/18)

2020.09.18 UP

高岡には、富山県内で現在唯一活躍する人間国宝(重要無形文化財保持者)の作家がいます。それが、大澤光民氏。高岡を代表する金工作家です。

 

 高岡市美術館で開催中の「大澤光民の世界 -人間国宝としての歩み-」は、人間国宝認定後、10年余りの軌跡を含めた初めての回顧展。若き日の作品も含め、宇宙や生命の根源など、壮大で人間愛あふれるメッセージが込められた多彩な作品を鑑賞することができる特別な機会です。

 

1941年に高岡市下伏間江に生まれた大澤氏は、高岡銅器の伝統技法の1つ、焼型鋳造技法(※1)に習熟し、1980年に「鋳ぐるみ」技法(※2)という独自の金属の鋳造技法を考案。2004年に「現代の名工」として表彰されたのち、2005年に鋳金の人間国宝に認定され、高岡の伝統工芸全体を牽引してきました。

大澤光民氏(2020年7月撮影)

 

 大澤氏の作風は、「鋳ぐるみ」技法によってもたらされる、偶然性でできた模様が奏でる有機的な温かさと、現代的で洗練された美しさの共存が何よりの特徴。

 

<<鋳ぐるみ花器「宙擁(ちゅうよう)」>>2015年 個人蔵

 

《鋳ぐるみ鋳銅花器「地から宙(そら)から」》2014年 高岡市鋳物資料館蔵

 

《鋳ぐるみ鋳銅花器「大宙(おおぞら)」》2018年 個人蔵

 

 特に今回の展示で注目したいのは、大澤氏がこの展覧会に合わせて若い職人とともに制作した最新作。大澤氏の尽きない創作意欲と新たな挑戦を知ることができます。また、大澤氏が監修を務め、5年の歳月をかけて2018年に完成した「平成の御車山」の制作についても紹介されています。

 

当展にあわせて制作された最新作

 

1つ1つの作品の奥から感じられる深遠な世界と、金属工芸に向き合い続けてきた大澤氏という人物の魅力を、ぜひこの回顧展から感じてみてください。

 

 

★新作制作の取組みの様子は高岡市デザイン・工芸センターのニュースレター最新号に掲載されています。大澤光民氏のインタビューのほか、ともに制作に取り組んだ若い職人たちの声も紹介。こちらもあわせてご覧ください。 https://www.suncenter.co.jp/takaoka/movin/pdf/newsletter6.pdf

 

★当企画展は、地域の特色を生かし、「日本の美」を体現する内容として国内外に発信するものにふさわしいと認められ、大型国家プロジェクトである「日本博」の認証を受けています。
富山県内では、「大澤光民の世界ー人間国宝としての歩みー」と「山口千代子 万葉衣装展」の2つ(いずれも高岡市で開催)が展覧会として県内初の認証となりました。

https://japanculturalexpo.bunka.go.jp/

 

※1.「焼型鋳造法」とは、真土(まね)と呼ばれる土で鋳型を作り、約900℃で焼いたのち、約400℃に冷ましてから溶解した金属を流し込む技法。  

※2. 鋳型に予めステンレス線や銅線などの金属線を釘で固定し、溶けた金属を注ぎ込む。焼型鋳造によって鋳型を焼き上げるときに、打ち付けた金属線が動いたり膨張したり金属の種類によって地金に溶け込んだりするため、象嵌(ぞうがん)とは異なる偶然の味わいをもつ文様を創り出すことができる。これにより、大澤氏は鋳金の世界に新たな加飾表現を生み出した。

 

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チューリップテレビ開局30周年記念

「大澤光民の世界 -人間国宝としての歩み-」

【開催概要】

・会期:2020年9月11日(金)~10月18日(日)

・場所:高岡市美術館(高岡市中川1−1−30)

・開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30まで)

・休館日:月曜日 ※9月21日(月祝)・22日(火祝)開館、9月23日(水)休館

・料金:一般1,000円、高校・大学生500円、中学生以下無料

・お問い合わせ 高岡市美術館 ℡0766-20-1177 fax0766-20-1178

 

【関連行事】

☆いずれも事前申込制・聴講無料

①記念講演会「大澤光民氏と村上隆館長による対談」

9月26日(土)

 〔第1部〕午後2時~午後3時30分≪満員御礼≫

 〔第2部〕午後3時45分~午後4時45分

 

②担当学芸員が語る「大澤光民の世界」

10月10日(土)午後2時~午後3時

 ※申し込みは電話にて、住所・氏名・電話番号を美術館へ。

 

◎特設サイト

https://www.tulip-tv.co.jp/oozawa/

 

◎高岡市美術館

https://www.e-tam.info/

 

 

地域で活動するアーティストの演奏をケーブルテレビで。ユニークベニュー番外編特別企画、無観客公演を7月から放映!

2020.07.08 UP

高岡市内外で活動するアーティストに高岡のまちなかでパフォーマンスをしていただき、音楽や踊り、伝統芸能など様々な芸術文化に気軽に触れることのできる「ユニークベニューTAKAOKAオンまちなかステージ」。

この事業は、文化活動を行うアーティストに活動・交流の場を提供するとともに、地域の方々に生のパフォーマンスを届け、文化芸術を身近に楽しんでいただくことでまちの賑わいを創出しようとするもので、昨年度から始まったものです。

 

 

昨年度に実施した様子

今年も多くのアーティストのステージを予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在、屋外・屋内ともにコンサートを一時休止しています。

そこで、「ユニークベニューTAKAOKAオンまちなかステージ」特別企画として、無観客コンサートを収録し、高岡ケーブルテレビ9チャンネルで放映することになりました。

出演者のみなさんは以下のとおりです。

 

「四番街のマリー」(ハーモニカ)

  • 県西部のハーモニカ認定指導員5名で編成されたアンサンブルグループ。

  • 放映予定日 7月6日(月)~7月12日(日)

 

②「Tumbling Dice(タンブリングダイス)」(バンド)

  • 2019年に結成。富山県を中心にライヴ活動しているアコースティックユニット。ローリング・ストーンズの曲を中心にカバー。

  • 放映予定日 7月20日(月)~7月26日(日)

 

③「侍ロックス」(バンド)

  • 洋楽ロックユニット。熱き侍魂を持ったメンバーの融合で70‘s洋楽ロックを中心にカバー。

  • 放送予定日 7月27日(月)~8月2日(日)

 

④「Life in a Mafia Family」(バンド)

  • ブルース、R&B、オールディーズ など、3人3色がひとつになったグループ。

  • 放送予定日 8月10日(月・祝)~8月16日(日)

 

放送予定日の、7:00~、11:00~、15:00~に60分番組で放映されます。

※放送日時は変更になる場合があります。

 

コロナ収束後にまた生演奏が聴ける機会を心待ちにしつつ、ぜひテレビでも出演者のみなさんのパフォーマンスをお楽しみください。

 

【主催】公益財団法人 高岡市民文化振興事業団

「ユニークベニュー✕高岡CATV!」高岡ケーブルテレビ9チャンネル(7月6日~7月12日、7月20日~)放映予定!/【収録版】ユニークベニューTAKAOKAオンまちなかステージ

 

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2〜3月「ユニークベニューTAKAOKA」ほかライブ情報!

 

市内外の老若男女を巻き込み発展中!とある鋳物工房が始めた「世界一のたい焼きプロジェクト」潜入レポート

2020.03.31 UP

400年以上の歴史を誇る高岡銅器。分業制のため、市内には多種多様な技術をもつ職人さんがいらっしゃいますが、企業・工房どうしで連携した新しい取組み、ユニークな取組みが盛んなことも高岡の自慢の1つといえるかもしれません。

今回ご紹介するのは、そんなユニークな工房のひとつ、北辰工業所( http://www.meivan.com/ )から広がっている、楽しくて美味しい取組みです。

 

***

 

表札・銘板や記念碑、オリジナルの焼印等をはじめ、クライアントの要望に応じた鋳物づくりを行ってきた北辰工業所。再生アルミニウムを活用したデザイン性の高い鋳物皿「FUKITO」が2016年にグッドデザイン賞を受賞するなど、柔軟な姿勢で時代にあわせたものづくりを行っている工房です。

その代表である鋳造技能士、定塚康宏さんには、もう1つの顔があります。それが「たい焼き職人」。20数年前、「長年培った鋳造技術で地域を盛り上げたい」との思いから、地元・高岡大仏の大判焼型を鋳造し、様々なイベントで自ら実演販売を行ってきました。それだけでなく、誰でも実演販売ができるようなレシピや練習用材料の提供・仕入先紹介なども行うなどのサービスも奏功し、これまで実に全国180箇所以上にオリジナルたい焼き・大判焼の焼き型を納めてきました。

現在のプロジェクトの契機となったのは、あるときテレビ局から持ち込まれた「2メートルのたい焼きを作りたい」という企画でした。そうはいっても2メートルは難しいだろうと、企画は実現しなかったのですが、検討を経て2015年には1m級の焼き型を制作。2016年には専用の焼き台も完成し、関心のある市民のみなさんの前で発表したり、ビジネスフェアに出展したりしながら、何度か試作を重ねていたのでした。

ちなみに焼き台は大阪の会社に発注したのですが、大阪の職人さんも面白がりながら作ってくれたのだそうです。

 

2年のブランクを経て、2018年末に再始動

2016年の段階では、1mたい焼きの薄皮の中に通常サイズのたい焼きを250〜300個入れるという方法で行っていた試作。ところが、1mサイズの焼き型にそのまま小麦粉と餡を入れた本来のたい焼きの形ではなかなか火が通らず苦戦し、プロジェクトは一時中断していました。

2年のブランクを経た2018年末、プロジェクトの存在を知る仲間からの声もあり、定塚社長は再始動を決断。年明け2019年1月には、第1弾イベントを開催しました。

この日は興味のある方々の顔合わせということで、久々に焼き型に火入れをし、集まった人々で交流を図りながらいろんなアイデアを出し合っていました。

写真は、取材に伺ったときの様子です。

久々の火入れ

 

一回り小さい70cmの型で生地を試し焼き

 

集まった人々の交流を兼ねるため、焼き型で焼きそばも!

 

焼きそばや試し焼きの生地をいただきながら、アイデア出し

 

工房に置かれていた焼き型の原型

 

ちょうどその日、テレビでもたい焼き特集をやっていたらしく、その時点でのたい焼き日本一は60cm。この70cmの型や1mの型で、ちゃんと厚みのあるたい焼きが完成すれば、日本一、あるいはギネスも夢じゃない!?

 

大学生・高校生も研究に加わり完成へ

以後、プロジェクトは毎月の試作を続けてきました。失敗も成功の糧にしながら、そのたびに入れ替わり立ち替り、市内外からいろんな人が応援に駆けつけたり、知恵を出し合ったり。

2019年春からは、富山県立大学で工学を専門とする岩井学先生、高岡向陵高校で物理を専門とする藤川武命先生にも声をかけ、学生・生徒の皆さんの研究材料としても試作がスタートしました。

 

4月は大学の先生&学生さんほか、関係者のみでの試作。赤外線サーモグラフィで温度管理をしながらの大研究。<公式Facebookページより>

 

5月。炭酸水やアルミホイルなどを駆使し、粉の配合にも工夫して、ようやく全体がまんべんなく焼けた1mのたい焼きが完成!<公式Facebookページより>

 

5月にようやく一つの完成を見たあともさらに研究を重ね、10月には富山県立大学・高岡向陵高校、それぞれの学園祭でもお披露目。

 

高岡向陵高校の学園祭にて。研究内容のパネル展示とともに、巨大たい焼きの大盤振る舞い。<公式Facebookページより>

 

富山県立大学の学園祭でのパネル展示。巨大たい焼きもきれいに焼け、長蛇の列が!<公式Facebookページより>

 

 

ミルフィーユ型たい焼きの作り方に密着

こうして1年を経て、大進化を遂げた「世界一のたい焼きプロジェクト」。久々に現場の声を聞いてみたいと、約1年強ぶり(2020年3月)に試作の場にお邪魔してみました。

この日は、今後この巨大たい焼きを様々なイベントなどで活用してもらうことを目指したHow to映像の撮影のため、定塚社長、富山県立大学の岩井先生、高岡向陵高校の藤川先生の3名で試し焼きを実施。

 

着火後の適温を見極めるため、鉄板の温度を測っています。

 

この日に作られたのは、学生のみなさんが考案したミルフィーユ型のレシピ。皮と餡・さつまいもを交互に重ね、学園祭でも大好評だったレシピです。

 

生地を投入。まんべんなく伸ばしていきます。

 

両側の型に薄く生地を伸ばしたら、餡を伸ばし、さらに予めふかしておいたさつまいもを投入します。

 

片側の生地をかぶせたら、さらに餡とさつまいもを。
これを繰り返して3層のミルフィーユを作成しました。研究では6〜7層まで実績もあるそうです。

 

みんなで力を合わせて型を合体させる瞬間は、一番の見せ所。

 

見事に完成!

 

切り分けたたい焼きはこんな風に層になっています。大きめに切り分けると20〜30人前、小さめに切り分ければ40〜50人前にまでなるそうです。

 

「高岡をたい焼きのまちにしたい」

「プロジェクトを通じて、たい焼きを楽しむだけでなく、集まった人々に自分の特技や好きなことを生かしてほしいんです」。定塚社長はプロジェクトに込める思いをこう話します。

「人それぞれの関わり方があると思いますし、たとえば自分が思う『たい焼き』を思い描いてもらって、それを型にして焼いて食べたり、人にあげたりということが広がっていくのも面白いと思っています。『高岡に行ったらどこの家でもたい焼きが出てくる』って言われたりしてね(笑)」。

たとえば最近では、井波彫刻の職人さんが獅子舞の獅子をかたどった原型を製作し、獅子舞型の焼き型ができつつあります。

 

獅子舞好きの富山県民に人気が出そうな、獅子の焼き型。上が原型。

 

「1m級のたい焼きを焼く」ということも、まだまだ発展途上なのだそう。

「3年計画で考えています。これからもいろんな違う業種の方とお会いして、知恵をお借りし、あと2年のなかで、どうやって広めていけるか。試作も、焼く人の度量で全然違うものが出てくるので、まだまだ終わらないですよ」。

1mのたい焼きにしろ、通常サイズのたい焼きにしろ、たい焼きが焼ける人を増やして「たい焼きのまち高岡」を作りたい——1mたい焼きの先には、そんな野望が定塚社長にはあるようです。

これからも富山県立大学・高岡向陵高校とも引き続き連携しながら、定期的に場が設けられる予定となっています。今後2年の間に、思わぬつながりから広がる、新たな展開もあるかもしれないですね。

 

ご興味ある方は、ぜひYouTubeやFacebookページをチェックしてみてください!

 

 

◎Facebookページ「たいやき世界一に挑戦!」   https://bit.ly/2URDSdL

◎世界一たい焼きの作り方(3月の取材時に撮影されていたもの) https://www.youtube.com/watch?v=08hn5UjK-Xo