ものづくりに取り組む職人など、魅力的な「人」との出会いを通じた旅の体験を提供している山崎慶太さん。提供するサービスが目指すのは、地域の人が集まって会話が生まれる暖かな日常空間に、旅行者が自然と溶け込んでその雰囲気を味わい、新しい発見や驚きを得ること。その暖かな日常空間と、伝統的な日本家屋にある「囲炉裏」を重ね合わせ、「囲炉裏<IRORI>」という屋号で活動しています。
山崎さんはもともと東京都出身で、2015年9月に高岡に移住してきたばかり。東京ではリサーチやコンサルティングなどの仕事を経て、外国人向けに体験イベントを企画するNPOを設立・運営していました。高岡との縁を得たのは、仕事上ものづくりが盛んな地域を探していたことがきっかけ。高岡には伝統工芸の様々な技が集積しており、しかもそこに携わる人の人柄がそれぞれ魅力的であることを知り、高岡に強く惹かれたのだそうです。
「人の想いやストーリーにこそ地域や伝統の魅力があり、体験はそれを伝える一手段でしかありません」と山崎さんは言います。「例えば銅器の工程をその道の職人なしに全部体験するより、体験できなくてもその職人と会話することの方に価値があると考えています。人を通して得られるもの(想いやストーリー、物理的なものや情報など)のなかから、それぞれがいいと思うものを持ち帰ってもらえたらと思うのです」。
人との出会いを通じて新しい発見や驚きを伝えたい、という想いは、今年から始めた新事業にもつながっています。主に県内の人をターゲットとし、高岡漆器や和菓子など、高岡および富山県内の食やものづくりの歴史や文化、そこに関わる人をテーマにしたイベント「TOYAMA TABLE」は、開催するごとに参加者を増やし、地域の人の地元再発見に一役買っています。
山崎さんは今、旅における“本物体験”、つまりその土地ならではの価値を深く感じられる体験の提供をさらに広げていくため、「囲炉裏<IRORI>」のブラッシュアップに取り組んでいます。これまで主に外国人を対象としていましたが、日本人も含めてより良質な旅、本物の体験を求める旅行者たちに、その土地ならではの“人”との出会いを通した鮮烈な記憶を刻んでもらいたいと、新たな連携先や対象エリアを増やすなど、日々準備を重ねています。外からの目線で高岡やその近隣地域を見る山崎さん自身の「新鮮な驚き」が数々の魅力的な企画となり、これからも地域の人や外から来る人に、新たな発見をもたらしてくれることでしょう。
※肩書は取材当時のものです