生け花の源流であり、日本最大の会員数を持つ池坊(いけのぼう)。全国に約400もの支部があるなかで、高岡支部は何度もコンクールで優勝、トップクラスの成績をおさめてきました。そこで長らく支部長をつとめてきたのが、中川雅風さんです。
「ここのところは『打倒高岡』と、全国の池坊の皆さんにライバル視されていて大変なんですよ(笑)」
高岡開町400年展と翌年の金沢21世紀美術館の花展で前田邸大砂物を展示。2008年と2019年からは池坊の理事に就任。多くの弟子を指導しながら、現在は、支部長である奥様の喜代美さんと二人三脚で活動しています。
「2人で協力しあえることがいいんでしょうね。研究会も盛んにやりますし、年間に7回以上ある花展にも全て出展しています。発表の機会を多く持つことは上達のための秘訣ですから。」
中川さんが生け花と出会ったのは、高校生の頃。生花店で花に囲まれて育ち、いつか花屋を継ぐ時のために、と生け花の道に。結果的にお店は継がず、定年まで製薬会社に勤めましたが、その間もずっと生け花を続けてきました。
「勤め人をしながら支部長をやる人は滅多にいませんし、まして理事にまでなるのは、ほんとうに大変なこと。いろいろなことに恵まれてなんとか60年続けてこられました。今は、生けるとなれば、瞬時にどこに何を置くべきかわかります。そこには無限の美しさがあって、ほんとうに楽しいんです。」
中川さんによると、生け花で大事なのは「間合い」なのだそう。
「池坊ではあまり花を使いません。強く語りかけてくる花は、見所として最低限にとどめ、慎みのある葉っぱや木や枝を語り合わせて、漂う空気を表現する。余白の美しさ、『間』を生けるんです。」
「私は生け花を『虚の世界』だと思っています。自然をよりきれいに、より自然にみせるもの。俳句と同じ、削ぎ落としたところに生じる美しさです。そこに間が生まれて、出会いが出てくる。」
梅には梅、桜には桜と、それぞれの植物に合わせた生け方の基本があるそうです。また「足で生けろ」「松のことは松に、梅のことは梅に習え」などの興味深い格言も。
「梅、桜、菜の花、杜若(かきつばた)、菖蒲(しょうぶ)、それぞれに違う、生えているその場に行かないとわからない、出生の美しさがあります。だから足を運んで、勉強しなさいというわけです。自然以上に美しく生けることは、自然を知らなければできませんから。」
「台湾、香港、中国、アメリカ、ヨーロッパ、池坊の支部は世界中に、ウクライナにもあるんです。戦時下でどのようにお稽古をされているのか、大変なことだと思いますが…。ただ、大変な状況だからこそ文化が糧になることもあると思います。日本では戦後、生け花は絶えるかと思いきや、どんどん発達しました。その重要性を体感しながら、若い世代にもぜひ頑張っていってもらいたいですね。」
※肩書は取材当時のものです
高岡市が制作しているオンラインパフォーマンス動画「高岡時空舞台」の新作「秋の峯に香る音色」では、池坊高岡支部がご出演され、中川さんが華道指導をされています。
動画を紹介するニュース記事はこちら
https://bunkasouzou-takaoka.jp/blog/2023/01/31/takaokazikuubutai2023/