「お箏はほんとうにきれいな音がする、その音色が魅力です。みんなで演奏するとまた気分がいいんですよ」と話すのは「正絃社かたかご会」代表の水谷佳代さん。
「正絃社かたかご会」は子どもから大人まで約20名が通うお箏の教室です。毎週のお稽古のほか、地域の行事や学校の周年祝、福祉施設への慰問、金屋町400年記念式典・高岡市芸団協50周年の祝芸といった祝賀会、高岡市の芸術祭、ユニークベニューTAKAOKAオンまちなかステージ等で演奏を披露してきました。
水谷さんは横田小学校での土曜教室にてお箏教室を20年、高岡市内中学校の非常勤音楽講師を25年務めてきた、高岡市民みんなのお箏の先生でもあります。2021年からは高岡市文化芸能館にて、文化庁子ども教室「伝統文化子供お箏体験教室」を新たに始めました。高岡で子ども向けにも開いているお箏の教室は珍しく、とても貴重な機会となっているようです。
「子どもたちに教えることに力を入れています。勉強でイキイキする子もいれば、スポーツやお稽古事でイキイキする子もいます。何が好きかはやってみなければわからないから、ひとつの可能性としてお箏に触れてもらいたくて。」
「教室では大学生や社会人になった生徒も一緒に子どもたちを育ててくれます。送迎の保護者の方とも一緒にお茶をしたり、目の見えない方にお箏を体験してもらったり、いろいろな人が交わる居場所をつくっていきたいと思っています。」
水谷さんがお箏を始めたのは中学生の頃。テレビで観た三味線に憧れ、お母様に楽器屋さんに連れて行ってもらったことがきっかけでした。そこで三味線を弾くにはまずお箏から始めるのだと先生を紹介され、そのまま習うことに。
「楽しくて続けていたら、高校2年生の頃に教師のお免状をいただけたんです。当時、家の事情でお箏を続ける費用の捻出が難しくなっていたんですが、教師として頂く月謝のおかげで続けることができました。その後も今に至るまで、教えるのが好きだから続けてこられたと思います。本当に感謝しかありません。」
代々お箏を演奏する家に生まれたわけではなく、偶然にもテレビで観たことがきっかけだったという水谷さん。40年以上に及ぶこれまでの教師生活を振り返り、教室を続けることへのある想いが芽生えたと言います。
「小学1年生から70代まで、幅広い年齢の方々と出会ってきました。社会人や定年後に始めた方も多く、それぞれのペースで箏を楽しんでいます。古典を基本に現代曲も取り入れ、『楽しみたい』『上達したい』『資格を取りたい』など、さまざまな目的に対応してきました。人生には続けにくい時期もありますが、いつでも弾ける心の拠り所となる場所でありたいと願っています。」
最後に次世代へのメッセージについて尋ねると、水谷さんはご自身の経験からこう答えてくれました。
「何かやってみたいと思ったら、迷わずチャレンジしてみてください。続かなくても、経験の引き出しが増えるのはとても良いこと。選択肢をたくさん持つなかで、自分がほんとうにやりたいことがきっと見つかっていきますよ。」