奈良時代には国府(今でいう県庁所在地)が置かれ、江戸時代には廻船問屋や船商、商店などが集まるみなと町として栄えた高岡市・伏木。高台には越中における浄土真宗寺院のトップに君臨していた勝興寺が荘厳な姿を見せています。
「おべんとうカフェにじのこや」があるのは、JR伏木駅から勝興寺に向かう坂の途中。キッチンカーでの移動販売で全国各地のフェスなどに出店していた牧野友香さんが、地元・伏木に構えたお弁当のお店です。
「”こんなところ”でやってるのがもったいないって言われたことがあって」
と笑う牧野さん。
「伏木を”こんなところ”って思ってる人はいて、私も昔はそうだったかもしれない。でも移動販売で代々木公園に行ってもフジロックに行っても、やってる仕事は同じだって気づいて、感覚が変わりました。都心には都心の制約がある。この場所だから、やりたいことがやりたいようにできるんですよ」
コンテナをつかった店内にはおいしい匂いがたちこめ、黒板には5種類から2つ選べるお弁当のメインメニューの他、フルーツクリームソーダなどワクワクする飲み物も。地域で経済を回したいからと、お店で使うものは地元の商店で購入。メニューは彩りよく、バランスを意識して考えます。
「ロボットが食事をつくるようになっても、人の手でつくられたご飯の価値はなくならないと思います。時間はかかるけれど、人の手がつくるってそういうこと。近くで工事してるのかなって作業服のおじさんなんかも買いに来てくれますよ」
敷地内にある東屋は、地元の大工さんに「ちょっとしたベンチ」を頼んだところ、「この街に建てるなら、半端なものはつくれない」と職人の技全開でつくってくれたものだそう。
勝興寺にちなんだ『勝興寺の七不思議弁当』を開発したり、地元のイベント「元気ふしきフェスティバル」に合わせて様々な出店者が集うマーケットイベント『サカノウエ祭り』を開催したり、地域とのつながりも大切にしている、にじのこや。だからといって「まちづくり」をしているわけではない、と牧野さんは言います。
「自分のできることのなかで、合うものがあればやるってだけで。たとえばマーケットであれば、地元の人にも出店者さんにも『ここにあるおもしろいもの』を知ってほしい、それらをつなぐ役割ができたらなと。今、何人かの仲間と一緒に近くでゲストハウスも計画中なんですよ。気の合う仲間を増やしながら、これからも楽しいことだけやっていきたいです」