高岡市金屋町は約400年の歴史を誇る高岡鋳物発祥の地。格子戸が連なる通りに、「大寺幸八郎商店」があります。同店は幕末の1860年の創業以来、高岡銅器の製造卸業を営み、現在は自宅を店舗兼カフェ&ギャラリーとして開放。高岡銅器などの銘品や新しいデザインのプロダクトが店内に並びます。この由緒あるお店に新しい風を吹き込んでいるのが大寺桂さんです。東京都出身の桂さんは。同店6代目の大寺康太さんとの結婚を機に金屋町へ。現在は子育てをしながら、康太さん、義母の雅子さんとともにお店に立ちます。
「高岡に来るきっかけは、都内でブロダクトデザイナーとして働いていたとき、かつて一緒に仕事をしていた方から高岡が面白いと聞いたこと。2014年に高岡クラフト市場街というイベントで高岡の職人さんたちや美味しい食に出会い、翌年にはクラフツーリズモという、ものづくりの現場を訪ねるツアーに参加して、その際に主人と出会いました。地方に人に会いに来る場所ができてうれしかった。主人の穏やかな人柄に惹かれて交際が始まり、2016年に結婚して翌年には娘が生まれました」。
学生時代には金工も学んだという桂さん。柔らかな金属である錫(すず)を使ったアクセサリーブランド「kohachiro」を立ち上げ、製作と販売、店内でのアクセサリー作りの体験なども行って好評です。
「金屋町や高岡のものづくりの世界は、外の人との交流がとても盛んなところ。閉塞感はまったくなく、こちらに来てからのほうがデザイナーの方と知り合う機会も増えました。子育てもしやすく、アクセサリーづくりを始めてからは足元が固まって、一気に住みやすくなったと感じています。やっぱり人とのかかわりを見つけることが大切だなと。
高岡の職人さんたちはとても魅力的ですし、東京の友達は美味しいものも求めて何度も遊びに来てくれます。でも、意外と地元の方がその良さに気づいていないように感じることもあります。アクセサリー作りなどを通じて、金屋町の良さを、気軽に、もっと知っていただけるといいなと思っています」。