高岡のものづくりの原点のまち、金屋町。鋳物のまちとして江戸時代の建物が残り、石畳と千本格子の町並みに風情を感じます。その一角に可愛らしい桃色と白の暖簾が風に揺れる、茶寮 和香(さりょう にこか)があります。
店主の早川勇人さんは高岡市生まれ。大阪の日本料理店の名店「一汁二菜うえの」で修行ののち、四国高松などを経て、2015年に金屋町で茶寮 和香を開店。地元の食材を中心にした、季節ごとの丁寧な美味しさと、器や盛り付けの美しさ、空間の素晴らしさに誰もが感動します。その評判は広がり、県内外から多くのお客さまが来店。早川さんは「自分が求める新鮮な食材があり、目指す料理が実践できる場として、再び高岡に出会いました」と語り、高岡だからこそできる料理を日々、発信しています。
お店は江戸末期に建てられたと推定される建物で、鋳物の地金の問屋さんだった商家を譲り受け、店舗兼自宅に改装。店内に一歩入ると、大きな吹き抜けや天窓、通りに面した窓から自然の光が心地よく差し込みます。器は高岡銅器や高岡漆器の歴史を受け継ぎ、現代に合ったプロダクトを手がけている高岡のブランドや県内作家のものを伝統的な器と組み合わせて使います。
「お茶の世界では真・行・草と言いますが、同じ料理でも器を変えることで、まったく違った世界観を伝えることができます。和食のルールに沿うだけでなく、このお店だからできるお料理と盛り付けで、言葉では伝えきれない季節の移ろいや日本文化の素晴らしさ、精神性を感じていただけたらうれしいですね」。
早川さんがお店を開いてから5年が経ち(2020年取材時)、金屋町には新しいお店が次々とオープンしています。
「高岡や金屋町の良さが、地元の方にも再発見されてきたと思います。この建物は幕末から現代まで、様々な歴史を乗り越えてきました。そのとき、先人たちはどんな思いだったのか。時代が大きく変わろうとしているいま、本物がよりいっそう求められる時代になると思います。僕も料理で未来へどうつなぎ、何を発信していくべきなのかを考えていきたいですね」。