真鍮製仏具シェア、9割。国内における仏具のほとんどを製造している高岡で、ハシモト清(せい)は、まさにその仏具の製造卸を行っている会社です。
仏壇まわりの仏具から、仏像や梵鐘などの大きいものまで、多様な商品を企画しています。原型製作・鋳造・塗装・伝統着色・彫金・螺鈿・蒔絵など、産地内の様々な職人と連携して製造した製品を全国の仏具店へ販売しています。
「何もしなければ小さくなっていく一方のマーケットなので、なんとかせんなん、とはずっと思っていて」
3代目になる橋本卓尚(たかひさ)さんは大学で機械システム工学を学んだ後、電子制御盤をつくる会社に就職。技術者として勤めた後、2009年にハシモト清に入社、2018年には代表に就任しました。
高岡に戻ってきてからは、産地の職人にものづくりを、社内の営業担当に流通を学び、華やかな色合いの小さい骨壷や、手元供養関係の新商品を発表。新しいものをつくるごとに、新しい展開が生まれていく手応えを感じてきました。高岡伝統産業青年会や高岡商工会議所の青年部にも加入し、人の繋がりから生まれるアイディアも大切にしています。
そうしたなかで、2020年頃からは仏具を仏具以外のマーケットに広めていくための「#サイレンスラボ」というブランドを展開。
その一環として、仏具の香炉を一点もののアートとして植物鉢にアップサイクルした「わびさびポット®」が生まれました。
もとは倉庫に大量に眠っていた香炉のデッドストック。それまでは売れないからと地金に溶かしていたものを、多肉植物を植えてマルシェで販売してみたところ、思いのほか好評に。昨今のSDGsや循環型経済への関心の高まりと相まって、ギャラリーで展示会を行った際には若者の注目を集めました。
「30〜40年前につくられたもののなかには、今では再現できない技術でつくられたものもあって、実は物凄い価値があるんですよね。その価値に自分たちでも気づきながらやっている感じです」
仏具といわれると使い方がわからないなど縁遠く感じますが、植物が植えられているとその形や彫刻の技術に目が向いて、「欲しい」という気持ちになります。
SNSでシェアされた「わびさびポット®」には、「自分の家の仏壇をよく見るきっかけになった」「家に同じ香炉があった」という反応もあるそう。
「高岡が仏具の産地って、知られているようで知られていません。こういうことで仏具や高岡のことが伝わっていく、気づいてもらえるのはとてもいいなと思っています」
「『#サイレンスラボ』の目的はこれまでと違うマーケットを開拓することなので、たとえば海外で香炉が香炉として売れるなら、それもいいんです。しっかりと広報をしながら、売る努力をしていくのがうちの会社の役割。職人がいなくなると、ものがどんどん造れなくなってしまう。だから、どうにかものづくりを盛り上げていきたいです」