歴史ある金屋町で、クラフトビールの醸造所と気軽に飲めるタップハウスを営む大島紀明さん。栃木県生まれで、大学院卒業後は大手自動車メーカーでエンジニアとして自動車開発に従事。アメリカ赴任中にクラフトビールと出逢いました。手を動かして、理詰めでものづくりをするプロセスがエンジニアの仕事と似ていると語り、やりたいことと、できることが合致したクラフトビールの世界へ。1年の修行ののち神奈川県から妻の実家のある金屋町に移り住み、2018年5月に醸造を開始しました。
「歴史ある石畳の通りに面してお店ができることや、自分でDIYできる比較的新しい建物だったこと。工場、店舗、自宅、駐車場がオールインワンで設けられる、これ以上の物件はないだろうと。しかも、番地が自分の誕生日と一緒で即決でしたね」。伝統的な格子戸が印象的なお店の正面や屋根以外、内装はほとんど自ら手がけたとか。「金屋エール」という香り高い定番のビールを中心に、ホップの香りを引き立てたフルーティーなビールなど、季節ごとに多彩なビールを醸造販売して人気です。
お店の前には大きなグリルを置き、希望があればスペアリブを焼き立てで提供することも。コニーアイランドという、本場アメリカ仕込みのひき肉ベースのチリソースたっぷりのホットドッグや野菜のグリル、フィッシュアンドチップスなど、ビールにぴったりのお料理も手作りしています。
ここでは、大企業で得られなかった喜びがあると話す大島さん。「お店ではいろいろなお客さまとダイレクトにコミュニケーションできます。自動車メーカーでのものづくりも、すごく楽しかったのですが、お客さまとの距離は遠く、車づくりは複雑で何万人という人がかかわって一台を作り上げていくもの。自分ができることは限られていました。いまでは何をやるにしてもスピーディーで、自分で全て意思決定できます。お店で常連さんに新作のビールを飲んでもらい、感想を聞かせてもらいながら一緒に楽しむこともできる。本当に面白い毎日だと実感しています」。